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えひめ、昭和の記憶 ふるさとのくらしと産業27-松野町-(令和6年度「ふるさと愛媛学」普及推進事業)

第2節 水産業と人々のくらし

 松野(まつの)町内を流れる河川は、広見川と目黒川およびこれらの支流である小河川からなり、県境をまたいで四万十川に合流している。広見川は、その水源を北宇和郡鬼北(きほく)町の節安渓谷に発し、三間川などと合流しながら松野町北部から町に入り、40余りの支流を合わせながら、町内を蛇行して流れている。
 広見川は水量が豊富で、流域の灌漑(かんがい)用水として利用されるとともに、多種多様な川魚が生息し、古くから地域住民の重要なたんぱく資源を補ってきた。浅瀬のせせらぎには、アユ、ハヤ、ニジマス、川エビ、カジカ、アカザなどの川魚が泳ぎ、所々のよどみにできた淵(ふち)には、コイ、フナ、ナマズなどの大きな魚も生息している。また、川底の小石や転石の間に生息するウナギは脂が多くて美味であり、県内外で知られている。
 しかし、専門の漁業者はほとんどおらず、季節ごとに副業として漁を行う漁業者や個人で川漁を楽しむ人がほとんどである。また、近年、河川の環境汚染等により生息する川魚の減少が懸念されており、アユ、ウナギ、アマゴなどの養殖や稚魚の放流が行われている。
 水産加工業では、昭和60年(1985年)からキョクヨーフーズ株式会社が海外輸出向けのカニカマ(カニ風味かまぼこ)の生産を開始した。その後、スーパーマーケットの総菜や大手回転ずしチェーンなど、国内向け商品の生産も開始し、冷凍カニ風味かまぼこ国内シェア1位となった同社製品の1割以上を松野町内の工場で生産している。近年では、愛媛県立北宇和高等学校と同宇和島水産高等学校の生徒が考案したカニカマバーガーの商品開発を行ったり、松野町のふるさと納税返礼品として同社の製品が採用されたりするなど、地域における重要な産業の一つとなっている。
 本節では、松野町の川漁と人々のくらしについて、Aさん(昭和11年生まれ)、Bさん(昭和25年生まれ)、Cさん(昭和26年生まれ)から、話を聞いた。