データベース『えひめの記憶』
中山町誌
五、 小踊
○ 小 踊(小池)
小池地区では、古くから小踊という郷土芸能が行われてきた。言い伝えによると享保六年(一七二一)頃から始まったとされている。その小踊の起源を尋ねてみた。
ある古老は、「唄の文句に、享保六年とありますが、それで、享保六年頃から始まったと伝えられているのでしょう。とにかく、小池へ嫁に来たらお姑さんから教えられる。どの家もそのようにして小踊は伝えられてきました。あれこれ考えてみると、始めてから一〇〇年は確実に過ぎていると思われますよ。でも、これから後は…」と語った。
女性の伝統的な力強さが、長年にわたって小踊を伝えてきたのであろう。ただ、テレビ・車社会となり小池地区でも自由に娯楽が選べる時代となっては、また、小踊に対する考え方が変わってくるかもしれない。
当時は、娯楽の乏しい時代だったので、小踊は、お祭・お節句・お盆や正月などの余興として催されたのである。
楽器・囃子としては、太鼓・三味線・拍子木なぞを用い、囃子方が謡を歌い、それに合わせて踊り人が数人派手な衣装をつけて踊るのである。また、その間にニワカ(笑劇・寸劇)を入れて演ぜられることもあった。その曲目には次のようなものがあった。
①三番叟 ②山づくし ③手まりつき ④道中みちびき ⑤阿波中 ⑥小大神 ⑦千代萩 ⑧あづみ ⑨島扇 ⑩げんじょう節 ⑪手拭踊 ⑫才豊敵討 ⑬綾織りボデン ⑭花傘踊 ⑮かだんひち ⑯紀国騒動 ⑰四つ竹 ⑱太鼓ボデン ⑲新角力 ⑳ひね角力 (21)どかな踊
右の曲目に合わせ歌謡は次のようなものであった。
○ 三番叟
1 高い山から谷底見れば 鶴と亀とが舞をまう
ハリワイドン・ソコラデ・エイサッサ
2 高い山から谷底見れば 瓜や茄子の花盛り
ハリワイドン・ソコラデ・エイサッサ
3 高い山からお寺を見れば お寺寂しや小僧一人
ハリワイドン・ソコラデ・エイサッサ
○ 山づくし
1 享保六年卯の歳に 謡い始めた山づくし
ソオレヱイソオレヱイ ヤアットナ
2 先づ正月は若林 門に賑う松葉山
ソオレヱイソオレヱイ ヤアットナ
3 二月は山に若葉山 木々の枝葉のみぐむ月
ソオレヱイソオレヱイ ヤアットナ
○ 手まりつき
1 一つとせ一夜明くれば賑かに おかざり立てたり松かざり
2 二つとせ二葉の松は色ようて 三階松やかっさ山
3 三つとせ皆さん子供し楽遊び 手まりついたり羽根をつく
○ 道中みちびき
1 行こや行こやと二人やも行こや ヨイヨイ ここが照る日はよそも照る
ヤットコセ ヨイヤナ ヨイヨイ
2 大洲千代若殿様に ヨイヨイ なぜに浪子がほれこんだ
ヤットコセ ヨイヤナ ヨイヨイ
3 思い出しては写真をながめ ヨイヨイ なぜに写真がものいわにゃ
ヤットコセ ヨイヤナ ヨイヨイ
○ 阿波十
1 一つといさひずえにおいずる枝と笠 順礼姿で父母を尋ねよかいなあ
2 二つといさふだらく紀州はみくまのの 那智山お山で音高く響かうかいなあ
3 三つといさ見るよりお弓は立ち上がり ぽんと白毛のしへんじょうかいなあ
○ 小大神
1 さあいえいようしんぼこ大神には 猫の皮を着せてのお
鼠や取れとはそれは無理じゃさあえー
2 さあいえいようしんぼこ大神には 犬の皮を着せてのお
兎や取れとはそれは無理じゃさあえー
3 さあいえいようしんぼこ大神には 寅の皮を着せてのお
千里やれとべとはそりゃ無理じゃさあえー
○ 千代萩
1 竹でよいのは御山竹裏はね元はね 元は尺八裏は殿御の杖の竹
オッチョコチョイノチョイチョイ
2 かわいがられた竹の子よ切られて割られて 桶の輪にかけられて締められた
オッチョコチョイノチョイチョイ
3 かわいがられた竹の子よ裏はね元はね 中とりてかわい殿御さんの筆の軸
オッチョコチョイノチョイチョイ