データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

愛媛県史 社会経済6 社 会(昭和62年3月31日発行)

六 環境衛生と食品衛生

 食品衛生法と食品安全性の確保

 従来警察で執行されていた食品衛生行政は、中央では昭和一三年から厚生省に引き継がれたが、地方では依然として警察官署の所管の中で指導取り締まりが行われた。戦後、新憲法の施行に伴って警察行政から一般行政部(衛生部)へ移管された。これを転機に昭和二二年一二月二四日食品衛生に関する総括的・綱羅的な法律として「食品衛生法」が制定され、牛乳営業取締規則以下戦前の一連の取り締まり規則は廃止された。食品衛生は、近代的・科学的な食品衛生行政の基礎をなすものであ
り、不良食品の排除、添加物化学的合成品の指定制度・規格基準の設定・標示の指導及び取り締まり、製品検査、営業の許可制度、食品衛生監視員制度、食品衛生委員会、食中毒の処理などを主な内容とした。食品衛生の指導取り締まりはこの法律で行われることになり、愛媛県では、保健所に食品衛生監視員を配置して施設の監視指導、抜取検査、食中毒の予防指導などに従事している。また昭和三一年一〇月には県食品衛生協会が設置され、各保健所管内に地区協会が置かれて食品衛生の向上発展を目指して活動している。
 その後、BHCなどの農業による食品汚染、カドミウム・水銀などの重金属やPCBなどの化学物質による食品汚染、有害物質混入による食品事故、さらには誇大広告による食品販売の問題など食品に関連する多くの問題が発生した。これらに対処するため昭和四七年六月三〇日「食品衛生法」が改正され、食品の安全確保、営業者責任の強化、検査制度の充実、表示制度の改善及び広告の規制などを法規面で示した。

 清掃法の制定と環境整備

 戦後の都市の発展、人口の増加、産業の発達など社会情勢の変貌に伴い、屎尿・ごみ等の汚物の処理が重要な社会問題となり、清掃事業を根本的に再検討する必要性に迫られた。厚生省は昭和二九年四月二二日「清掃法」を公布、清掃事業を環境衛生施策の基本として位置づけた。その内容は、清掃事業を市町村の固有事務とするとともに新たに国・都道府県の事務として処理すべき事項を取り入れたこと、対象となる汚物を実態に即応して変更したこと、清掃事業の合理化を図ったこと、汚物処理方法の改善を企画したこと、清掃事業に対する国民の協力を要請したことなどであった。愛媛県当局は、昭和三〇年に特別清掃地域一四か所を指定、各市町村長を中心とした汚物処理の具体策を実施推進させることにした。特別清掃地域を有する一〇市二九町村は汚物焼却場の設置などを促進、昭和三六年時で二四市町に二六施設が出来た。同三七年四月には新居浜市に県下初の屎尿処理場が完成した。化学肥料の普及で屎尿は有価物から厄介な汚物に変わり、その処分に各市町村とも苦慮、同三七年時で屎尿運搬車を使って処理していたのは県下七四市町村のうち松山市など一一市二九町であったが、請負業者が海洋へ投棄するため海洋汚染の原因ともなった。県は昭和三八年度から年次別施設整備計画を立て国・県費補助を市町村・衛生事務組合に配分して屎尿処理施設の整備建設を促がした。昭和五五年時の屎尿施設処理率は八二%、ごみ焼却処理率は六三%で、いずれも全国平均七一%、五七%を上回っている。下水道は昭和三七年七月松山市に下水道終末処理施設が出来たのが最初であったが、他の都市では施設事業計画が進まず、昭和五一年五月今治市、同五四年二月川之江市、同五五年三月新居浜市、同五六年三月三島市、同六〇年三月西条市・八幡浜市にようやく処理施設が設けられるにとどまった。このため昭和五六年時の公共下水道普及率は一一%に過ぎず、全国の四三%を大きく下回っている。

 環境衛生関係営業の規制と環境衛生同業組合の結成

 環境衛生関係営業の取り締まりは、明治以来県令により行われ、その取り締まりの性格は公衆衛生の見地からというより、むしろ防犯・防火の風紀維持などを主たる目的として警察に広範な取り締まり権限を与えていた。終戦後、日本国憲法の施行に伴いこれら県段階の規則はいずれも廃止され、純然たる衛生行政の一環として国の法律で規制されることになった。こうして、昭和二二年一二月二四日「理容師法」、同二三年七月一二日「興行場法」・「旅館業法」・「公衆浴場法」、同二五年五月二七日「クリーニング業法」が相次いで制定された。
 これらの法律については、その後数次の改正が加えられたが、その内容が必ずしも実態にそぐわなかったため、業界内部でも過当競争が生じ、衛生措置の低下が憂慮されるようになった。この対策として、政府は昭和三二年六月三日に「環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律」を定めた。同法の骨子は環境衛生関係営業一八業種について、営業者がそれぞれ業種ごとに都道府県を単位とする環境衛生同業組合を設立し、その組合が当該業種における過当競争の克服、組合員たる営業者の経営の安定及びその衛生措置の向上に関する各種の事業を行い得ることとした点にあった。これに基づき、県内には理容と美容業の環境衛生同業組合をはじめクリーニング業・公衆浴場業・興行・旅館・食肉商業・中華料理の同業組合が表5―4のように昭和四一年までに結成された。県はこうした環境衛生同業組合を通じての営業者の自主管理体制を強化するとともに、昭和五〇年三月「消費者保護条例」を制定して、県事務所・市町村・生活センターで安全衛生に関する苦情処理など消費生活相談事業を推進している。

表5-4 環境衛生同業組合の結成

表5-4 環境衛生同業組合の結成