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愛媛県史 社会経済2 農林水産(昭和60年3月31日発行)

四 農地法の制定


 農地改革の成果維持

 昭和二七年七月一五日法律第二二九号で農地法が公布され、同年一〇月二一日から施行された。これに伴い旧三法(自作農創設特別措置法・農地調整法・自作農創設特別措置法及び農地調整法の適用を受けるべき土地の譲渡に関する政令「譲渡令」)は廃止された。農地法は、農地改革の成果を維持し、農地は耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、耕作者の農地取得を促進し、その権利を保護し、土地の農業上の効率利用を図るための諸調整を行ない、もって(1) 耕作者の地位の安定 (2) 農業生産力の増進 とを図ることを最終目的としている。そして、農地業務・開拓業務を包括した幅の広い、かつ柔軟適切な運用が期待されることとなった。農地法は、旧三法の内容をほとんど継承したものであるが、開拓業務では次の点が画期的に改められ、朝鮮動乱後(昭和二五年以降)の復興した日本の国勢に合った内容となった。

 自作農創設特別措置法

 即ち、自作農創設特別措置法関係では、未墾地などの政府買収については同法第三〇条で対象物件を明示し、同法第三一条で、県農地委員会が未墾地買収計画を定めて手続きを進めるように規定していた。さらに同法施行規則(昭和二〇年一二月二八日農林・大蔵省令第一号)第一四条で、前記買収計画は県開拓審議会(国、県等関係行政機関の職員及び学識経験者から知事が委員任命)の諮問を経て定めた。それゆえ、開拓審議会を通過すれば、おおむね買収できる仕組みであった。ところが、新農地法第四四条第二項で国が買収する土地は、傾斜、土性その他の条件が政令第四条で定める基準に適合し、かつこれを農業のために利用することが、国土資源の利用に関する総合的な見地から適当であると認められるものでなければならないこと。となり買収する土地の条件が厳しくなった。

(注)政令第四条にかかる買収する土地のうち、農地として開発す
  る土地の条件は、おおむね次のとおりである。但し、二~五は
  例外規定が認められる。
  一 気温
    北海道以外の土地にあっては、五月から九月までの月平均
    気温の平均が一三度以上であること。
  二 傾斜
    一五度以下であること。
  三 土性
    壌土、埴壌土、砂壌土、埴土、八%以上の粘土を含む砂土、
    中位泥炭土又は低位泥炭土であること。
  四 土層
    底岩又は盤層までの厚さが、四〇㎝以上であること。
  五 礫の含有量
    耕作の業務に支障を与えるおそれがある礫を一日で取り
    去るのに必要な労力が、反当たり三〇人以下で足りるこ
    と。

 また、新農地法第七一条では、売渡後の成功検査を行なうよう規定され、検査の結果により同法第七二条で土地などの買い戻しができるよう明文化し、惰農排除を考慮することとなった。

 農地調整法

 次に、農地調整法関係では、昭和一三年制定当時は、第一条で、「本法ハ互譲相助ノ精神ニ則リ農地の所有者及耕作者ノ地位ノ安定及農業生産力ノ維持増進ヲ図リ……」となっていたが、昭和二○年一二月以来、実に一〇回の改正があり、廃止時には、「第一条 本法ハ耕作者ノ地位ノ安定及農業生産力ノ維持増進ヲ図ル為農地関係等ノ調整ヲ為スヲ以テ目的トス」となっていた。
 従って、新農地法同様、耕作者保護目的であったため、開拓関係業務としては、新旧両法に実質的差違はなかった。しかし、新法では、第八〇条の規定を設け、開拓財産である未墾地などの旧所有者などへの売り払いを明文化した。即ち、旧法では、自作農最優先主義で土地売り渡しを行なっていたが、新農地法では、開拓不要地は、原則として旧所有者に売り払うこととなった。さらに、開拓不要地でなくとも、「公用、公共用又は国民生活の安定上、必要な施設の用に供する緊急の必要があり、かつ、その用に供されることが確実な土地等」(農地法施行令第一六条第一項第四号)も売り払い、所管換え若しくは所属替えをすることができることとなった。その結果、自衛隊・空港・学校・道路などの用地にも転用された。

 譲渡令

 一方、譲渡令(昭和二五年制定)において、自作農創設特別措置法の用地取得方針をそのまま継承した。即ち、昭和二五年七月三一日以後において、市町村、県農地委員会が未墾地買収計画を樹てる予定の未墾地で建設工事を必要としないものは、この譲渡令により直接増反者に対して強制譲渡することとした。この場合における未墾地価格は、昭和二五年七月三〇日現在の賃貸価格に、一、二八〇倍を乗じて得た額とし、従来の買収価格(近傍類似の畑の価格の四五パーセント)に較べて大幅の引き上げであり、いわゆる時価主義をとった。従って新法でも、同趣旨の時価主義が貫かれており、法律成文そのものの体裁は整えられたが、その内容には変わりはなかった。

図2-1 開拓事業の進め方・系統図式

図2-1 開拓事業の進め方・系統図式