データベース『えひめの記憶』
愛媛県史 社会経済2 農林水産(昭和60年3月31日発行)
五 農業基本法と開拓事業
開拓用地の強制買収制度の変更
昭和三六年、農業基本法の制定に伴い同法に基づく農業構造の改善施策の一環として、農地保有の合理化と農業経営の近代化を図るため、農地法の基本趣旨である農地改革の成果維持をそこなうことのないような配慮のもとに、(1)家族農業経営がその経営規模を拡大しようとする場合、(2)家族農業経営の補充と発展に資するため、法人組織により農業経営を行なおうとする場合、(3)農協が農地などの信託を受けてその農地などの有効利用を図り、農業経営の改善に寄与しようとする場合などに必要な農地などの権利移動を容易にするため、農地法の一部改正が行なわれた。
開拓パイロット事業
一方、農林省では、開拓パイロット事業実施要綱〔昭三六・八・八 三六農地A第一二八〇号(企)〕を制定し、開拓について用地の強制買収は行なわないよう定め、土地改良法に基づく申請事業として申請者の自己調達にするなどの改革がなされ、戦後開拓の一大変革を行なった。
その基本方針は次のとおりである。
第一 基本方針
一 開拓パイロット事業は、農地を造成し、農業経営規模を拡大して農業構造の改善、自立経営の育成を図
るとともに、既耕地に求めることの困難な大規模モデル農業経営の創出を図ることを目的とする。
二 この事業は、土地改良法に基づく開田、開畑事業及びこれらの事業と一体となって実施する必要のある
経営基本施設設置事業、または環境整備施設設置事業とする。
三 この事業は、土地改良法第三条に規定する有資格者の申請によって実施するものとする。
四 この事業における農地造成事業は、事業地区の農地造成面積及び基幹工事の有無に従い、国営、県
営または団体営事業に区分するものとし、一地区の事業は、基幹工事より開墾作業、土壌改良に至るま
での一事業主体が一貫して施行するものとする。
五 この事業の申請者は、原則として地元増反、移住入植などにより経営を拡大しようとする現在農業者と
する。
六 国は、原則としてこの事業のために新たに用地取得を行なわないものとし、事業に必要な用地は、申請
者の自己調達とする。
七 国が適当と認めた場合には、開拓財産たる土地について、この事業を行なうことができるものとする。
八 この事業においては、畜産、果樹など成長部門の経営の育成を図ることを主眼とする。
九 この事業についての営農指導などは、原則として既存農業者に対する一般農業施策によるものとする。
(農業改良普及事業の指導による。)
一〇 昭和三六年度以降に新たに着手する開拓事業は、新制度が制定されるまでの間、原則としてこの要綱
の定めるところにより、開拓パイロット事業として実施するものとする。
(注) (1) 開拓パイロット事業は折りからのみかんブームと重なって本県では、各地で続々と実施された。
(2) 新制度は、昭和四五年四月一日から、農用地開発事業として発足した。
さらに、未墾地取得に必要な資金については、昭和三八年六月二九日、「農地等取得資金及び未墜地取得資金融通取扱要綱」が制定され、農業経営構造改善資金融通制度の一環として、農林漁業金融公庫から融通されることとなった。