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愛媛県史 地誌Ⅱ(中予)(昭和59年3月31日発行)

六 公営団地とマンションの分布

 公営団地

 松山市近郊には昭和五〇年現在、県営・市営を合わせて五三六三戸の公営住宅が存在する。その建築の推移をみると、三五年には大部分が木造住宅で約八〇〇戸であったものが、四五年には木造比率は四〇%に低下したものの、公営住宅の総数は約三〇〇〇戸に達した。四〇年以後の建設住宅は、ほとんどが簡易耐火および中層耐火(三階ないし五階)となり、五〇年には木造比率はわずかに二二%となった。現在では、二〇年以上経過した木造住宅は、老朽化、地価の高騰と相まって中層耐火構造への切り換えが進行中である。
 五〇年時点の公営団地の分布をみると、団地単位の規模の拡大とともに、市街地から周辺地域への拡散傾向が顕著である(図2-14・表2-3)。三五年までは市街地縁辺の山越・和泉・南町・朝美・南江戸・枝松・久米などに建設されたが、四〇年代に入ると、その建設地はさらに拡散し、和気・潮見・浮穴校区から砥部町や重信町・北条市にまでおよんでいった。市街地から地価の安い周辺地域へ拡散するにあたっては、団地の規模が拡大し、太山寺団地のように五〇〇戸を超す大団地も出現した。こうした傾向は県営・市営ともに共通した現象である。なお、市営団地については、古三津・山越・本町・南江戸などで古い木造住宅の中耐構造への切り換えがみられる。これらは比較的市街地にも近く、今後はますます利用価値が高まることが予想される。


 マンションの分布

 松山市におけるマンションは、四八年一二月の「ドミール道後」に端を発し、その後四九年に五件・二五一戸、五〇年に二件・一三四戸、五二年から五四年にかけては毎年一件の計三件・二三一戸と続き、五四年三月までに全部で一一件・六四二戸が供給されている(表2-4)。五五年以降建設された代表的なマンションにはロータリー本町(三〇五戸・写真2-5)、シャンボール千舟(九一戸)・エバグリーン一番町(二三戸)・ロータリー道後(五〇戸)などがある。その他中古マンションも含めると一四棟、一一〇〇戸分あるといわれる。
 ところで、マンション需要を支える二本柱は価格と交通条件であるが、松山市においてはこの二つの要素とも未だ満たされているとはいえない。とはいえ、若い世代のなかにはマンションの持つ〝ファッション性〟や〝足回りのよさ〟、また都会生活経験者のなかには〝鍵一つの便利さ〟を重視する向きもあり、ある程度のマンション需要は根強く持続していくものと考えられる。マンション購入の目的は一般住宅用以外に、セカンドハウス用(二DKクラスが主体)、オフィス用、店舗用、投資資産用(一DKクラスが主体)などに分かれている。
 マンションはその立地条件がきわめて重要である。交通の便、学校、スーパーマーケット、病院、土地柄、日照、給排水、静かさなどの居住環境を備えていなければならない。さらに地価負担を軽減するため、建物の高層化が必要なことから、用途地域のうち容積率が四〇〇%以上の地域に限定されてくる。こうしたマンション用適地は、松山市の場合、都心に集中しているが、実際には都心ではそうした土地の出物は数が限られているため、マンション業者は土地入手難となりやすい。マンション事業の売上げ構成をみると、一般的には用地費が二五%、建築費五〇%、諸経費一〇%、金利と利益が一五%といわれている。
 マンションのもつ問題点としては、狭い、遮音が十分でない、各部屋の独立性が乏しい、庭がないなどから居住性にやや難がある。また、土地が共有で共有持分はきわめて僅少のため、建物の老朽化が進むと資産性も劣ってくる。こうしたことから、マンションは〝永住〟には不向きといえ、ある程度の年限がたてば〝買い替え〟のニーズが多く出てくる。特に、若い居住層ほど次の住宅希望は、庭つき一戸建て、通勤・買い物の利便性、自然環境の良さ、住居自体の良さなどをあげている。
 松山市の市街地及びその周辺地域におけるアパート・マンションの建築状況をみると、道後・湯築・清水・味酒・雄郡・素鵞の各校区では八・五万㎡以上の床面積をもち、都心部の番町・八坂・東雲の各校区では建築床面積も少なく、人口分布のドーナツ化現象をうらづけている。建築年代別にみると、四五年以降の建築が六〇%以上を占める校区は石井・素鵞・桑原・久米・八坂・椿・余土・たちばな・味酒・清水などで比較的新しい建て物が多い。なかでも五一年以降の建築が五〇%以上を占める石井・椿・たちばな・新玉・桑原の各校区は、国道やそのバイパス整備にともない交通の利便性が増したためアパート・マンションの集中立地をみている(図2-15)。具体的にみると、小坂から枝松にかけての地域や本町付近、国鉄松山駅周辺、石手、東石井町、土居田町などに多く分布している。

図2-14 松山市近郊における公営団地の分布(昭和50年)

図2-14 松山市近郊における公営団地の分布(昭和50年)


表2-3 松山市近郊の公営団地(昭和50年現在)

表2-3 松山市近郊の公営団地(昭和50年現在)


表2-4 松山市におけるマンション既販売物件

表2-4 松山市におけるマンション既販売物件


図2-15 松山市のマンション・アパートの建築年代別床面積

図2-15 松山市のマンション・アパートの建築年代別床面積