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わがふるさとと愛媛学   ~平成5年度 愛媛学セミナー集録~

1 街頭スナップに見る時代の顔

 昭和23年ころに、私は一時期街頭スナップと称して、松山市の街中を通行する人々の顔を、5万枚近くも撮った。これをまとめたのが写真集「戦後-松山城下・町と人」である。

 *スライド映写(紙数の都合により、写真の一部のみ掲載)

 当時は戦後まもなくの食料難時代で、社会的にも緊張した情勢があったはずだが、このスナップで見ると、あまり暗い陰がない。どちらかと言うと、明るい開放された表情が感じられる。それは、現在の我々の顔ともまた違っているように思われる。
 有名な柳田国男は、「明治大正史世相編」の中で「最近東京人の目が大変怖くなった。もちろんしさいに重ねて比べてみないとわからないほどであるが」と述べ、また昭和26年には写真雑誌に「地域によっても人の顔が違う。それもだんだん地域の特徴ある顔が少なくなった」と書いている。
 劇作家の高橋丈雄氏は、前記の写真集「戦後-松山城下・町と人」について「この時代の人々の顔は、この時代でなければ見られないものであって、将来もあるいは過去にもなかった終戦直後の人の顔である。」と評された。
 また、朝日新聞は「顔は時代とともに変わるのではないか。」と、この写真集を書評で紹介した。
 そうしたことから考えても、人の顔を撮影し続けることだけでも、貴重な記録となるように思われる。