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わがふるさとと愛媛学   ~平成5年度 愛媛学セミナー集録~

1 民謡研究のきっかけ

 西洋音楽一点張りの私が、民謡に関心を持ったのは今からちょうど30年前。日本音楽研究の全国大会に発表者として参加した。関係者の懇親会の席上、余興として郷土の民謡を披露することになり、民謡がたくさんある北海道、東北から、東京、北陸、近畿、順々にふるさとの民謡を朗々と発表した。自分の番が近付くにつれて、心臓がドキドキ、息が詰まる思いをした。郷土の民謡が全く頭に浮かばない。「四国の柳瀬と申します。四国は一つと言う合言葉がございますので、有名なよさこい節で四国四県を織り込んで歌います。」と言って、「♪四国四県は、なぜ会わさぬ気(阿波、讃岐)、こっち(高知)むきゃんせ、えひめけん」と歌った。酒席で覚えた替え歌でごまかしたことが、本当に恥ずかしい思いであった。そのころ学校教育(音楽教育)にもわらべ歌とか日本の音楽が教材として取り上げられ始め、私も郷土の民謡を教材にしようと研究をしていたので、「なぜ愛媛県に、全国的に知られる有名な民謡がないのか。代表的な民謡がないのか。」という疑問を抱くようになった。