データベース『えひめの記憶』
中山町誌
二、 中山町及び佐礼谷村合併促進協議会の経過
両町村とも、伊予地方事務所の指導助言を受けながら合併についての協議を重ねていたが、昭和二九年(一九五四)九月二八日佐礼谷村議会で、同年一〇月六日中山町議会で、「中山町及び佐礼谷村合併促進協議会規約」が議決され、一〇月六日から施行された。
協議会の担任事務は、「町村合併に関する必要な調査」「町村合併促進法第六条第一項に規定する新町村建設計画の策定その他町村合併に関する協議」で、事務所を中山町大字中山丑三〇五番地第二中山町役場内に置いた。
協議会は、会長及び委員二七人で組織し(両町村とも一四人の同数とした)、それぞれの委員会に属した。
一、総 会
昭和二九年一一月一九日、中山町役場で開催
亀本好惠会長ら二六人が出席
伊予地方事務所から鷲野所長・高市総務課長・仲岡主事が出席
(一) 規約による委員の専門別構成及び事務分担を定めた。また、専門委員は関係町村から同数を抽選により選出した(○印は委員長)。
<総務委員会> <文教厚生委員会> <産業土木委員会> <財政委員会>
○宮田 喜市 ○入岡 雅行 ○高野 忠利 ○河内 睦男
亀本 好惠 宮崎 要範 亀岡 義雄 西岡 進
宮岡 正實 松本 吉兼 高橋 直志 岡田 昌年
宮田 眞實 下岡 明春 西岡 猛夫 入岡 猛
玉井 久夫 野口 梅一 福岡 進見 船田 幸稔
櫻木寛一郎 橋本 友重 高岡 久 佐々木音重
影浦菊太郎 宮内 勝己
米田 清志 武智 定吉
(二) 新町発足の目途を、昭和三〇年一月一日とするよう努力すること。
二、専門委員会の事務分担等
(一) 総務委員会
1 新町村の名称
2 新町村建設の基本方針(財産処理・町議会の構成・人事等)
3 町村役場、支所又は出張所の統合整備に関する事項
4 都市計画に関する事項
5 各種団体の統合に関する事項
6 その他各専門委員会から回付された事項
7 職員の身分配置等に関する事項
(二) 文教厚生委員会
1 小・中学校、高等学校に関する事項
2 教育委員会に関する事項
3 公民館・図書館に関する事項
4 授産施設・保育所・公営住宅・公園・その他厚生施設に関する事項
5 病院・診療所・隔離病舎・その他の衛生施設に関する事項
(三) 産業土木委員会
1 道路・橋梁・その他の土木施設に関する事項
2 水道・運送事業・その他の公営企業に関する事項
3 河川・溜池・用排水堤防・治山・開拓・耕地等
(四) 財政委員会
1 基本財産の造成に関する事項
2 本年度及び爾後五ヶ年間の年度別財政計画
3 税務行政に関する事項
4 財政計画及び負債に関する事項
専門委員会は、昭和二九年一一月二一日、中山町役場で全委員会開催。
新町建設計画を審議し、後記のとおり決定し、協議会で承認、同年一二月二日両町村とも新町建設計画に関し知事の意見を聴くことについて議決、同年一二月三日、愛媛県知事に提出した。
同知事は、同年一二月四日伊総第一二四〇号で、新町建設計画を承認する旨通知があった。
(五) 町村合併の処分通知
伊總第三号
昭和三〇年一月五日
伊豫地方事務所長
中山町長
殿
佐礼谷村長
町村の廃置分合について
さきに申請のあった標記について、別紙写の通り處分せられたから御了知ください。
なお、合併に伴う事務引継等については、遺漏のない様準備を進めてください。
愛媛懸告示第九二三号
伊予郡中山町及び佐礼谷村を廃し、その区域をもって新たに中山町を設置し、昭和三〇年二月一日から施行する。
昭和二九年一二月二一日
愛媛懸知事 久 松 定 武
伊總第一二四〇號
昭和二九年一二月四日
伊 豫 地 方 事 務 所 長(印)
中山町長殿
新町建設計画の策定について
一二月三日付をもって協議せられた標記の件について別紙のとおり承認せられたから通知します。
地第一〇九五号
昭和二九年一二月三日
愛媛県知事 久 松 定 武(印)
中山町長
殿
佐礼谷村長
新町建設計画の策定について
一二月三日付で協議のあった標記の件については、適当なものと認める。
なお、本承認は建設計画中の補助金、起債その他の要望事項等を承認するものではないから念のため。
附 属 書 類
一、国道の整備について
松山より佐礼谷村、中山町を経て宇和島に通ずる国道一九七號線は重要なる産業道路であるが幅員狭少のため自動車の対面交通は勿論諸車の通行に支障を来している現況につき、これが幅員を六・五米に拡張及び舗装整備方を要望する。
尚右路線に架設されている長沢橋、一の瀬橋及び落合橋は木橋であり老朽破損している現況につき早急にコンクリート橋に改修方を要望する。
二、国有鉄道の軌道延長について
豫讃線内子支線は五郎駅を経て内子町に通じているがこれが内子―南郡中駅間の延長連結方を要望する。
三、県道の整備について
(一)現在改修中並びに未改修である次の県道は産業交通の重要なる道路であり農林産物資の輸送その他の諸車住来頻繁なるため速かに改修及び幅員拡張方を要望する(路線名等省略)。
(改修五路線・三〇、〇〇〇m)
四、農林道の新設改修費に対する補助金について
次の農道並びに林道は農林産業振興のため早急に新設改修を必要とするのでこれが事業費に対する補助金の交付方を要望する。
(一)農道(路線名等省略)
(改修四路線・六、六四〇m)
(新設一一路線・二一、七〇〇m)
(二)林道 (路線名等省略)
(改修五路線・一六、三〇〇m)
(新設一〇路線・二五、二〇〇m)
(拡張一路線・二、〇〇〇m)
(木橋改修一路線・二〇m)
五、直通電話回線の設置について
中山町佐礼谷村間の電話回線は現在郡中局を経由して中山局と佐礼谷局の二局扱いとなっているため相当長時間の待合時分を要するので支所との事務連絡は勿論一般加入者間の連絡にも大なる支障があるから二局間の直通電話回線の早急設置方を要望する。
六、町道竹之内線を早急にバス運行路線として認定方を要望する。
協 定 書
一、町議会議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員数
町村合併後最初に行われる選挙に限り旧町村の区域を区域とする選挙区を設け各選挙区において選挙すべき議員数は次のとおりとする。
中 山 町 一 七 人
佐 礼 谷 村 九 人
計 二 六 人
一、農業委員会
農業委員会は統合する。
一、新町五ケ年建設事業の実施に当っては旧町村の過去の実態に立脚しその均衡を保つよう相互に努力するものとする。
一、職員の給与身分に関する事項
1 職員の身分に関しては法の定めるところによる。
2 給与の是正は新町において逐次これを行う。
3 新町発足前の退職者の措置は旧町村において之をなし其退職金は町村条例に定める額(普通退職)の外その一〇割相当額以上を加算する。
一、支所勤務職員の数
支所職員は五名とする。
一、支所長の資格
支所出納員を兼ねて支所長とする。
一、町名
中山町は現状のとおりとし佐礼谷村のみ旧村名を大字とする(例 中山町大字佐礼谷字影浦)。
一、基本財産の内現金及有価証券の処分
旧町村に於いて処分する。
一、佐礼谷村平岡の伊豫市編入については県において町村の境界変更統合整理実施の時期到来の際処置する。
一、喜多郡立川村の一部が本町へ編入についてはさきの調停書による。
一、町制施行の日は昭和三〇年二月一日とする。
右 協 定 す る。
昭和二九年一二月一一日
中山町長 亀 本 好 惠
佐礼谷村長 宮 田 喜 市
合併までの佐礼谷の動き
中山町の合併は、順調に推移したかにみえるが、佐礼谷村側には、明治二二年(一八八九)町村制実施後一村のままであった長い歴史を持ちながら廃止になる村名に郷愁を感じ、あるいは利害の対立や自己の主張などが交錯して、村を二分するまでに紛糾、遂には七人の議員が辞職する事態にまでに発展した。
昭和二九年(一九五四)九月二一日の村議会に、「中山町及び佐礼谷村合併促進協議会規約」が提案されたが、中山町との合併に反対する村民の意向を背景に否を述べる議員も多くて、可決に至らなかった。
ついで九月二八日、全議員一六人出席の村議会に、再度「合併協議会規約」が提案された。
櫻木寛一郎議長は、「表決することは意に反するが、事ここに至っては表決で決定するより他に方法はない」として意見を求めた。
岡村議員は表決を求める動議を出し、高岡・靏岡・泉議員が賛成。河内副議長は、「全議員が今後円満にいくことを議事にのせてすすむ誓約ができれば差し支えない」と述べ、岡村議員がこれに同調した。
このことから、櫻木議長は大部分の賛成があったものとみなして表決することに決した。
表決の方法は、可とするものは「中山町」
否とするものは「伊予市」
と記入して投票することになり、その結果は、可決七票、否決七票、白紙一票であった。
櫻木議長は、可否同数のため、地方自治法第一一六条の議長の権限を行使して、「合併協議会規約」は可決となった。
このとき、中山町との合併に否を投じた七人の議員は、地方自治法に基づく辞職を決意し、一〇月五日、連署して議員の辞職届を櫻木議長に提出した。
一〇月一九日、福岡・高岡・平井・松田・向井の五議員から、七名の辞表提出についてを議題とする村議会臨時会招集の請求を受けた宮田喜市村長は、翌二〇日臨時会を招集した。
辞 職 届
今回の町村合併に関し、吾等は挙村一致、大同団結、以て之が目的達成に邁進致しましたが、今後の団結の見透しを懸念し、辞職を決意するに到りました。ついては、地方自治法第百二十六條の規定により御許可下さる様お願い致します。
昭和二十九年十月五日
佐礼谷村議会議員 下 岡 茂 武
坪 内 秀 夫
上 田 信太郎
松 岡 義 應
岡 村 武 雄
泉 勘三郎
松 森 梅 市
佐礼谷村議会議長櫻木寛一郎殿
会議には、九名の議員が出席し、七名の辞表提出について審議の結果、同日付で辞職を許可することに決定、ただちに櫻木議長から七名に対して辞職許可の文書が交付された。
このあと七名の補欠選挙が実施されて新しい議員を迎え、中山町との合併は進展していった。
<辞 職 議 員> <補欠選挙当選議員>
「氏名」 「住所」 「氏名」 「住所」
下 岡 茂 武 村 中 下 岡 明 春 村 中
坪 内 秀 夫 犬 寄 久保田 義 正 影 浦
上 田 信太郎 山 口 亀 岡 荒 博 影 浦
松 岡 義 應 犬 寄 米 田 武 美 坪之内
岡 村 武 雄 梅之木 中 岡 光 芳 安別当
泉 勘三郎 坪之内 津 田 徳 市 日 浦
松 森 梅 市 日 浦 山 田 文 字 日 浦