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中山町誌

五、 さまざまな工夫

 井堰に使用された用材から往時の植物の様子を知ることが出来る。使用されていた用材は二〇〇〇本を越えていたが、多いのはナラ・クヌギ・杉・桧材で松材はわずかであった。これらの木の多くは若木がほとんどで、堰材の結束はすべてツタカズラを使っていた。漏水防止には、俵材と男木を編んだものを用い、足下に詰めた男木の浮き上がりを防止していた。また堰材の枕木に使用されている用材は、かつて家屋に使用されていた建築材が転用されていた。この転用材を調べていくと、四世紀初頭の高床式倉庫のことが分かり、それを復元することができた。
 復元家屋は、梁間二間・桁行間三間の高床式であり、地面を掘り柱を固定する掘立柱式の建物であり腐食部分が九〇センチメートルあった。「ねずみ返し」の上部で柱は半截されて、板壁材を結ぶ工夫がなされていた。屋根材のタルキは、棟に固定するコマ状突起が工夫されていた。柱に「ホゾ」と「ホゾ穴」があり、入口部は観音開きで、柱が回転するよう工夫されていた。壁板は梁間二間を一枚板にし、中央の棟持柱(妻柱)と隅柱で固定していた。この壁板は隅柱位置で、桁行の壁板と合掌組手で合わせていた。「ネズミ返し」は古照の北約五〇〇メートル地下二メートルの所で出土した遺物にみられ、古照出土の柱の直径と合致した。
 これらの堰材の切断面から、鉄斧の刃幅は四センチ、三・五センチ、三センチの三種があると分かり、柱を半截した面は「鉋」が使用され、柄穴にはノミ痕が遺存していた。また板壁に鋸歯痕がみられた。