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身近な「地域のたからもの」発見 -県民のための地域学入門-(平成22年度)

18 えひめの地域おこし -雉の町-

 北(きた)宇(う)和(わ)郡鬼(き)北(ほく)町では、平成4年から地域の特産品開発の一貫として「雉(きじ)肉」に着目してきた。雉は低カロリーであると同時に豊富な栄養価を持つことから、「食鳥の王様」ともいわれ、古来から優れた食材として知られている。
 当初500羽から始まった生産規模は現在、年間3万羽を目指す規模にまで拡大し、鬼北町は国内最大の生産地となっている。また、県内外の老舗(しにせ)料理店や大手ホテルなどにも販路を拡大し、「鬼北雉」の知名度は年を追うごとに上昇している。
 『えひめ、人とモノの流れ』の中で、「きじプロジェクト」にかける思いやこれまでの経緯を、地元の**さん(昭和25年生まれ)は次のように語っている。
 「平成4年(1992年)に愛媛県はアグリトピア構想という農林水産業の活性化事業を進めていました。当時同じ鬼北盆地の町村のうち、日(ひ)吉(よし)村には『ユズ』、松(まつ)野(の)町には『モモ』、三間(みま)町には『三間米』といった特産品がありました。そこで、特産品を作っていこうということになり、順調な伸びを見せていたのが『雉』の事業だったのです(写真3-3-22 参照)。
 平成17年から、全体的な設備が整った形で『鬼北雉工房』が本格的に稼(か)動(どう)し始めました。雉工房は次の四つを基本理念としています。①『健康とまじめ』
をテーマとすること。②地元の食材を生かしたスローフードを基調とする食品づくりを目指すこと。③元気な中高年及び老人向け食材、そして乳幼児の離乳食として雉を中心とした食べ物を研究開発し、商品化を目指すこと。④研究・開発成果を商品化し、地域ブランドとして確立することで、食育を通じて地域の活性化を促すこと。こういう理念のもとで『きじプロジェクト』が生まれてきました。
 鬼北雉の特徴は『熟成』させていることです。なぜ熟成の工程を採用したのかというと、古くから地元に伝わる言い伝えがあったからです。雉はとった直後より、腐る手前ぐらい(熟成する)までしばらくおいて食べたほうがおいしいということが知られていたのです。
 この熟成について、四国総合研究所を通じて実験をお願いしていたところ、私たちが予想していなかったことが新たに判明しました。それは、熟成すると肉の甘味や旨(うま)み成分であるイノシン酸が増えるばかりではなく、アミノ酸がすごく増えることがわかったのです。しかも、そのアミノ酸はなんと18種類もあり、その中には肝臓機能に効果的に作用するものが非常に多いことがわかり驚きました。
 そして、もう一つ必要な技術があります。それは、凍結保存して1年経っても刺身で食べられるようにするための保管技術です。温度が低い分だけ維持費は高くなるわけですが、あえてそうすることによって、熟成した雉肉の保管と年中出荷が可能になったのです。
 町内では、広く雉について知ってもらおうと毎年10月に広(ひろ)見(み)川の河川敷で行われる『でちこんか』というイベントのときには、2,500人分のジャンボ雉鍋を作ったり、JA主催の農業祭や農業公社での『きじまつり』などを実施しています。また、町内にある道の駅『日吉夢産地』と『森の三角ぼうし』での雉のイベントも合わせると、ほぼ毎月1回は町内のどこかで認知イベントをやっている状況です。
 また、雉があるというのは売り込み材料になると考えています。町営の成川(なるかわ)渓谷(けいこく)休養センターのメイン料理を雉料理にしてから宿泊数が増え、その中にはリピーターも増えてきています。だから、もっと民間の旅館や食堂に雉料理を始めてもらって、鬼北町に行けばどこの店に入っても雉料理があるという状況にして、雉を目当てに人がやって来るようにしたいと考えています。こういう町づくりの突破口として雉に力を入れていくことがうまくいき、そして人材の確保とが実現していったときに、はじめてきじプロジェクトが成功したといえるのではないかと考えています。」
 息の長い、地道な取り組みから地域おこしの夢が広がっていく。