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身近な「地域のたからもの」発見-県民のための地域学入門-(平成22年度)

17 えひめの学校・学び-山村留学-

 砥部(とべ)町(旧広田(ひろた)村)立高市(たかいち)小学校は、平成4年度から山村留学を行っていることで知られている。山村留学によって、それまで一ケタだった児童数は平成5年度には33人に増え、地元児童6人に対して地元以外の児童27人が在籍するようになった。砥部町公式ホームページでは、「山村留学(山村留学センター)とは」と題して次のように記述している。
 「留学生は、1年間親元を離れて、山村留学センターで集団生活し、隣接する高市小学校に通学します。 豊かな自然環境の中で、都会では味わえない数々の自然体験や勤労体験をします。また、留学生が地域の人々や、地元の子どもたちと交流し、触れ合い、互いの長所を伸ばしながら、心優しくたくましく成長することを目指しています。山村留学センターでは、センター長、指導員3人、調理員3人が24時間体制で子どもたちと関わり、多彩な活動や体験学習、生活指導を行います。山村留学センターは個性を尊重しながら集団生活を通して『楽しく 仲良く 健康に』の三つを生活目標としています。」
 砥部町の山村留学制度は、他地域の留学制度の多くが「里親(さとおや)」中心なのに対して、全寮制の寄宿舎生活をセールスポイントにしている。この留学制度を実質的に支えているのは、留学センターの指導員の方々といえる。『県境山間部の生活文化』の中で、山村留学センターの指導員をしていた**さん(昭和7年生まれ)は、次のように語っている。
 「この高市地区は、全戸がPTA会員で、地域をあげてPTA活動に協力してくれるんです。それで、都会ではなかなか経験できないような体験学習を、いろいろと行うことができます。皆さんが、『うちの家ヘゼンマイ採りに来んか。下刈りもきれいにして危なくないようにしてるから。』『タケノコ掘りに来い。』と誘ってくれたり、子どもの日には家に埋もれていた立派なコイノボリを持ち寄ってくれて、かなりにぎやかに大空を泳ぎました。
 夏には、すぐそこの川に地域の人の寄付でアメノウオやマスを入れてもらって、釣り大会もしました。地元の子も一緒になって、30人ほどの子供たちが合わせて160匹も釣って大喜びでした。暮れが近づくと、お年寄りからしめ縄の作り方を教えてもらい、冬休みには各自が家に持ち帰ったんです。スキーにも連れて行きました。特に、沖縄から来ている子が感激していましたねえ。おばあさんがお手玉の作り方を教えてくれたり、竹馬を作って遊んだり。この地域の皆さんが非常に協力的なので、助かっています。」
 この制度の主役である留学生の子どもたちは、留学してどのように思っているだろうか。『県境山間部の生活文化』の中で、子どもたちは、家庭での生活と異なり、集団生活ならではの規則もあって、窮(きゅう)屈(くつ)さを感じている子もいるが、全体的な印象としては、プラスの評価をしている。やはり「豊かな自然に囲まれて、都会ではできないことを体験できる。」といった意見が最も多い。また、留学に際して保護者が子供に最も期待していたであろう、「規則正しい生活ができるようになった。」「がまん強くなった。」等、甘えっ子からの脱却を示す意見も多く聞かれ、留学の成果がはっきりと現われている。このほか、「いろんな県の人と友達になれた。」という意見もかなり多く、山村留学によって新たな交流が始まっていることがよくわかる。
 「前の学校だと、授業中に一度も先生に当てられないことが当たり前だったが、ここは小さな学校なので、手を挙げなくても何回も当てられ、いやでも、勉強するようになる。」とか、競争意識も芽生(めば)えるのか、食事の時「友達がおかわりしたら、自分もつられておかわりしてしまう。」などの発言があった。
 留学センターの集団生活の厳しさを通して、親のやさしさ・ありがたさも、よくわかってくるのだろう。豊かな自然と温かい人情に包まれて、子どもたちは、一般的に言われることの多い「現代っ子の弱さ、甘さ」を克服し、確実に成長している。平成22年度の山村留学は8人である。