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わがふるさとと愛媛学Ⅵ ~平成10年度 愛媛学セミナー集録~

◇今の小田川

 現在の小田川が、昔のきれいだったころに比べて変化してきたのは、植林や河川工法や流れ込む雑排水等のいろいろな事項が複雑に重なり合い、水生動植物に必要な栄養素が少なくなり、そうして食物連鎖が変化してきたためではないかと私は思います。
 その一例として、毎年9月下句になると、大洲市の肱川橋付近でアミメカゲロウ(水生昆虫)が大量に発生します。このアミメカゲロウの幼虫は泥の中で成長し、水面でふ化し、地上ではわずか1日の寿命しかありません。ふ化したアミメカゲロウは、夕方になると光を求めて飛び交い始め、明け方近くになると寿命が尽きます。こういったアミメカゲロウが大発生するのは、水中構造物によって泥がたい積し、幼虫の成育場所ができたからだと私は思っています。
 この小田川では、豊かな自然を守るために町民一人ひとりの「石一個運動」によって、護岸工事の工法が「コンクリート工法」から「自然工法」に替えられました。これは「小田川ふるさとの川モデル事業」のおかげだと思います。
 私が小田川の清水を使って育てているオニテナガエビは、東南アジアの河川に生息する熱帯産のエビです。成長温度は水温28℃で、成体は淡水で育ちますが、卵から稚エビに成長する間は、海水40%・淡水60%の汽水(河口の水や海岸近くにある湖のように海水と淡水と交じり合い塩分の少ない水)でないと育ちません。養殖に使う海水は長浜の魚市場の井戸水からくんで帰ります。卵からかえった時は、小さいので顕微鏡で見ないと分かりません。
 全てのエビの養殖池には、メダカを入れています。これは、メダカの泳ぎで水質を知ることができるからです。毎日、メダカを観察しながら水質管理をしています。
 自然界では、アユ・ウナギ・カニ・エビ等は全て海水域で産卵して汽水域で稚魚等となり、淡水域で成体となります。昔のこのあたりのことわざに、「5月の登りガニ、9月の下がりガニ」というのがあります。これは、春の産卵を海水域で行うために9月にカニは川を下り、夏の成長期を淡水域で迎えるために5月にカニは川を登ってくる、そして冬は冬眠期であることを表しており、これすなわち自然の営みなのです。
 現在、愛媛大学で県下全ての海域、特に各河口での水質検査がなされていると聞いておりますので、やがて細かい検査研究がなされ、素晴らしい研究成果が発表されますよう大きな期待を寄せております。