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愛媛県史 社会経済2 農林水産(昭和60年3月31日発行)

四 民有未懇地の買収


 未墾地取得の推進

 自作農創設特別措置法第三〇条の規定では、未墾地買収の対象となる土地などを次のとおり定めていた。


  (自作農創設特別措置法)
  第三〇条 政府は、自作農を創設し、又は土地の農業上の利用
   を増進するため必要があるときは、下に掲げるものを買収す
   ることができる。
 一 農地及び牧野以外の土地で農地の開発に供しようとするもの
 二 政府の所有に属する土地で農地の開発に供しようとするものに関する所
   有権及び担保権以外の権利
 三 第一号又は前号の土地附近の農地又は牧野で当該土地と併せて開発する
   のを相当とするもの
 四 第一号又は第二号の土地の上にある立木又は建物その他の工作物
 五 漁業権
 六 水の使用に関する権利
 七 開発後における第一号又は第二号の土地の利用上必要な土地、立木又は建
   物その他の工作物
 八 第一号及び第三号の土地を除く外農地の開発上必要な土地
 九 公有水面の埋め立てをする権利
   2 前項第六号乃至第八号に掲げるものは、政府が、これを使用することができる。

 未墾地買収業務は、一種の進駐軍命令であったので、県においては、九〇〇〇haの目標確保の具体策として、地方情勢、特に開拓可能地調査及び山林面積などを基礎資料とし、郡市別に達成面積の割り当てを行ない、絶対確保の指示を行なったので、各地方事務所においては、市町村別に割り当てを下ろし、各市町村及び同農地委員会の責任において自主的な未墾地開放運動を展開した。
 未墾地開放促進協議会は、このような情勢下に、県・農業団体・森林関係団体などの代表者をもって組織され、県下各地において協議会を開き、開拓事業に関する趣旨の徹底と未墾地開放に関する措置について、もろもろの要請活動を行なった。
 自作農創設特別措置法による買収計画は、県農地委員会が中心となって実施することを原則としたが、市町村農地委員会においても、一〇ha以下の小団地については実施できることとし、昭和二二年七月二日付け買収を第一回とし、未墾地買収計画が積極的に実施されるようになった。買収実績は表3-3のとおり、九、〇〇〇haの目標を達成したのである。
 弓削村の村議会議事録をひもどくと、昭和二一年九月四日の議案第三号で「大谷地区入植認可二関スル件」が上程され、「大谷地区入植二付イテ、村内二居住セルモ原籍他村二有ル者及ビ他村二居住セル者ヨリ入植希望申込者有リ、如何スベキヤト意見ヲ徴セシニ、○○氏、村内二引揚者漸増ノ折柄トテ、本村居住者ハ兎モ角、他村居住者ニハ断ル事トシテハ如何卜提案、満場之二賛シ、入植認可ハ本村居住者二限ル事卜決定ス」とあり、当時の厳しい世相をうかがい知ることができる。
 さらに、同村農地委員会では、昭和二二年四月二三日、委員会を開き、「未墾地買収に関する件」を議案としている。そのとき、各委員あての文書の中には、「未墾地買収に関する計画立案上必要につき、貴地区内の開墾者及び開墾地、開発予定地を御調査の上、個人又は団体の代表者は、午後一時までに、資料及び筆記具持参するよう御通知下さい。なお、開墾者中、地主に無断又は充分の丁解なく、手を付け、境界を不明にし、又は立木などを処分したるは、適当ならざるにつき、至急境界又は伐採立木の状況を当方に書面及び地図、その他、旧状を明瞭に判定し得る書類を提出するよう伝達して下さい。」とあり、終戦直後の混乱期に食糧確保のため、一部では見さかいなく開墾したのではないかと想像される。
 なお、未墾地買収価格は、自作農創設特別措置法適用時には、近傍類似の畑の価格の四五%としていた。その根拠法令は、自作農創設特別措置法第三一条、同施行令第二五条であるが、要するに、未墾地開放が、農地改革の一環として行なわれる趣旨を貫徹せしめ、農地に比して不当に高い対価の支払われることのないようにしたものである。
 また、自作農創設特別措置法及び農地調整法の適用を受けるべき土地の譲渡に関する政令(譲渡令)による買収では、時価主義となり、昭和二五年七月三〇日現在の賃貸価格に、一、二八〇倍を乗じて得た額となり、従来の買収価格に比べて大幅な引き上げを見た。

  (注) 未墾地買収について特に注意すべき点は
      第一に、開放の対象が将来田畑となる土地だけでなく、採草地、薪炭林などにする附帯地と一定の被買収者に与
      えられる代地を含むということである。
      第二に、およそ開墾する土地は、全部開放の対象とするというのではなく、おおむね五〇町歩以上の地区(国の直
      営地と代行乃至委託地区)は全部、その他の小面積の地区は、村内で計画的に開墾を行なうとか、土地取得が当
      事者では困難であるとかいう場合のみとされたことである。つまり、自分の土地を自分で開墾する場合とか、地主と
      の話し合いで土地が入手できる場合とかは、示談買収となり計画対象外となるのである。(例、宇和町新城明石地
      区は、当初、入植者入岡文雄氏らの提唱で強制買収をしないよう取り運んでいたが、地主の約束不履行により県買
      収となった。)

図3-1 民有未墾地の選定手続

図3-1 民有未墾地の選定手続


表3-3 未墾地取得実績表(単位 ha)

表3-3 未墾地取得実績表(単位 ha)