データベース『えひめの記憶』
愛媛県史 社会経済2 農林水産(昭和60年3月31日発行)
第一節 漁業協同組合の沿革
漁業組合と法制の沿革
漁業組合準則が明治一九年五月六日農商務省令第七号によって制定せられ、これにより漁業者のための組織が全国的に初めて設立されることとなったのである。
愛媛県では同年二月一〇日布達第二三号にて水産取締規則を制定し一五水産区(讃岐六区、伊豫九区であったが、二二年の分県後は九区となった)ごとに漁業組合を設けさせ、組合規約を定め認可をうけるべきこととした。さらに二二年一一月一九日県令第六六号によって漁業組合規則を公布し、漁業に従事する者は適宜区画を定め、組合を設け、規約を作り、知事の認可を請うべきこととした。このほか本規則によって組合を業種別組合と地区別組合の二種類に区分したことと、知事の認可をうけて組合が連合会を設け、その規約を作れるようにしたのである。この結果当時すでに組織せられた組合があったが、明治三四年四月一三日旧明治漁業法が制定せられ、同法一八条~二二条までは漁業組合に関することが規定され ①一定の地区内に住所を有する漁業者は行政官庁の認可を得て組合を設置できること ②漁業組合は漁業権の享有及び行使の権利をもち義務を負うが組合は漁業の自営はできないこと ③漁業組合が地先水面の専用の免許を受けたときは組合規約の定めるところに従って組合員に漁業をさせること ④漁業組合の設置、管理及び監督に関する規定は主務大臣が定めること ⑤水産業の改良発達及び水産動植物の繁殖保護など水産業に関し共同の利益を図るため水産組合を設置することができることとなったのである。そして翌三五年五月一七日漁業組合規則及び水産組合規則が省令により定められるとともに明治一九年制定の漁業組合準則は廃止されたのである。
明治四三年四月二一日漁業法の全文改正が行なわれ、漁業組合並びに漁業組合連合会は法人として公認せられるとともにその目的として漁業権・入漁権などの取得、貸付を受け、組合員の漁業に関する共同施設の設置ができるようになるなど組合事業の整備拡充が図られたのである。
そして同年一一月一二日漁業組合または漁業組合連合会の設立・登記・管理・分合・解散・清算その他に関する漁業組合令を勅令によって定めた。なお同年県でも漁業組合令施行細則を県令で公布し、提出書類の経由機関や、常備すべき帳簿などについて定めた。
昭和八年三月二九日漁業法の改正が行われたが、このうち漁業組合に関するものとして ①組合の目的として新たに組合で共同利用施設の設置が認められた ②出資制・責任組織を導入し、出資組合を漁業協同組合と呼ぶこととした ③漁業組合の自営事業を認めたこと ④漁業組合連合会も出資制、責任制をとるとともに各種の経済事業を行い得るようにするなど、組合の経済基盤の強化措置がとられた。
さらに昭和一三年三月一七日漁業法の改正によって、漁業協同組合は組合員及び家族からの貯金の受入れができるようになり、これに伴って産業組合中央金庫法(現在の農林中央金庫法)が改正され、漁業協同組合と同連合会の産業組合中央金庫への加入が認められることとなり、経済事業団体として本格的な第一歩を踏み出したのである。
前述したとおり昭和一八年三月一一日水産業団体法が制定され、漁業組合と水産会を整理統合し、各市町村に一漁業会、各都道府県に一水産業会と一製造業会、中央に中央水産業会を組織することとし、地区内の有資格者は必須加入とし、また、それぞれ上部団体に加入することを原則としたのである。この水産業団体法に基づき設立された団体は民主的な性格は失われ、太平洋戦争遂行のための国策協力機関と化してしまったのである。
昭和二〇年八月、太平洋戦争が終結となり、わが国は民主化への途をたどることとなったが、水産業界も制度改革が着々と進められ、昭和二〇年一二月二四日水産業団体法改正によって団体役員の行政官庁による任命制を廃止し、団体の民主化が図られた。
次いで昭和二三年一二月一五日、水産業協同組合法が公布され、翌二四年二月一五日施行となり名実共に民主的な水産業団体として発足することとなったのである。
なお水産業協同組合法の制定に伴う水産業団体の整理等に関する法律によって、同日付で水産業団体法は廃止された。
そして昭和二四年五月二〇日水産業団体整理特別措置法が公布と同時に施行され、水産業団体に対する債権者の保護手続及び財産評価の基準が定められた。
昭和二三年制定の水産業協同組合法によって設立された漁業協同組合は大きく分けると、地区ごとに設立される「地区漁協」と特定の漁業種類ごとに組織される「業種別漁協」である。地区漁協はさらに「沿海漁協」と「内水面漁協」とに細分される。
設立の目的は、組合はその行なう事業によってその組合員または会員のために直接の奉仕をすることであり、組合員が協同して経済活動を行ない、漁業の生産能率をあげることによって組合員の地位向上を図ることとしている。