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愛媛県史 地誌Ⅱ(中予)(昭和59年3月31日発行)

四 大川嶺と柳谷キャニオン


 大川嶺

 小田・柳谷・美川の三町村の境界に位置する標高一五二五mの大川嶺は久万郷の名山であり、ドーム状の重量感あふれる山容が久万郷の各地から眺められる。大川嶺をとりまいては、西の明(一五〇五m)・美川峰(一五二五m)・笠取山(一五六二m)・狼ケ城山(一三八〇m)などの定高性のある山がとり囲み、大川嶺はその中にそびえる盟主といえる。
 大川嶺の山腹斜面はかなり急斜面であるが、山頂部には隆起準平原の平坦面が広くみられる。この平坦面は一面くまざさにおおわれているが、そのなかにだいせんみつばつつじの大群落があり、初夏には美しい花を咲かせる。山腹にはぶなの天然林がうっそうと繁っていたが、人工林化が進み、現在は南斜面に一部その面影をとどめるのみである。大川嶺一帯は昭和三九年四国カルスト県立自然公園の一部に指定され、全域が特別地域である。
 山頂部の平坦面は昭和五一・五二年の両年にわたって、国営の草地開発事業が実施され、一三五haの草地が造成され、美川村の経営する育成牧場が開かれた。その牧場建設の付帯事業として、美川スキー場から大川嶺の山頂まで道路が建設され、山頂への探勝を容易にしている。この通路は昭和五五年七月には茗荷谷川最奥の木地と連絡し、南麓からもこの山へ自動車で登ることが可能となった。
 大川嶺は夏の登山でにぎわう山であったが、冬季にスキーに訪れる者も多かった。この山は冬の季節風をまともに受けるので、積雪が多く、そのなだらかなスロープと相まって、自然のスキー場となっていた。美川スキー場が開設されてからはスキーに訪れる者は減少した。


 柳谷キャニオン

 仁淀川の支流黒川が、その本流に合流するところから上流七㎞の間は、両岸に断崖が続き典型的なV字谷を形成する。この黒川溪谷を柳谷キャニオンと称するが、その中心地は八釜の甌穴である(写真7-26)。
 八釜の甌穴には、硬岩のチャートが渦流によってうがたれた大小三〇の甌穴群があり、大きいものは直径一二m、深さ一二mにも達する。川の右岸に八つの甌穴が並ぶので、八釜と名づけられた。甌穴の規模としては全国屈指であり、昭和二七年国指定の天然記念物となった。この甌穴には、雨を呼ぶ龍が住んでいるという伝説があり、龍のきらう金物を甌穴に投げ込むと豪雨がおこると伝えられる。この溪谷一帯も昭和三九年四国カルスト県立自然公園に指定されている。
 甌穴への探勝路としては、国鉄バスの崎山バス停から谷底に降りる遊歩道がある。降り一五分程度で甌穴群に達することができる。溪谷にかかる八釜橋より甌穴を望むことができるが、谷底の岩頭に立つこともできる。橋のほとりには、昭和五二年県の観光整備事業によって建設された休憩所がある。溪谷は春の新緑と秋の紅葉が美しい。