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わがふるさとと愛媛学   ~平成5年度 愛媛学セミナー集録~

6 木山音頭(八木節系)・よいやな節(追分節系)

 今治に残っている民謡としては、「木山音頭」(八木節系)と「よいやな節」(追分節系)がある。『愛媛の民謡』によれば、二つの民謡はいずれも慶長7年(1602年)、今治城築城の時に歌われたとされている。今治の盆踊り歌として親しまれている木山音頭は、娯楽として継承をされてきたためか、歌や踊りは知っていてもその由来については知らないという人が非常に多く、びっくりした。
 今治城築城の時、人夫たちを慰労するために、普請奉行の木山六之丞(ろくのじょう)が自分の風体を歌に作ったのが木山音頭で、さらに、工事の能率を上げるために「ヨイヤナ、ヨイヤナ」と大工たちがはやして、よいやな節を生み出したと言われている。
 しかし、同じ築城の作業歌として作られたとすれば、木山音頭とよいやな節の二つの歌が果たす役割は、むしろ逆ではないだろうか。物語風に作られた歌を木遣口説(きやりくどき)というが、木山音頭は、材木や石を引っ張る時や地突きの時に、作業の能率を上げる木遣口説として作られたのではないか。一方のよいやな節は、地突きなど手が焼けて長続きしない作業の休憩の時に、音頭取りが皆を慰労するために歌ったのではないか。そういう時には必ず、即興的にいろいろと追分調の歌を歌い、「♪アー、ヨイヤナ」とはやしたてて、休憩をした。そもそも、ああいうふうに「♪アーアー」と言っていたのでは、作業は進むはずがない。従って、作業の休憩の時に音頭取りが慰労するために歌ったのはよいやな節の方だと考えるのがよいと、私は思う。