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面河村誌

第五章 動 物

 西日本における最高峰石鎚山(一九八二メートル)、及びこの山系に属する亜高山地帯には、普通寒地帯にだけ生育する多数北方系の種類が残存していて、動物相においても活目すべき多くの報告があり、その全容が明らかにされている。一方、高知県の海岸から、豊後水道にかけては、黒潮の影響によって、亜熱帯要素が多く混入して、地理的にも生態的にも複雑で、その分布の様相は実に興味がある。一言でいえば、四国の複雑な分布を一つの縮図として示している所が、石鎚山及び面河山の動物相の特色ともいえる。もちろん、これだけが原因でなく、暖かかった第三紀及び寒かった第四紀洪積世の時代に入り込んだ動物が、石鎚・面河の複雑な地形や気象に適応して生育したためでもあろう。
 石鎚山を中心とした、標高一七〇〇メートル級の山々には、ここだけに分布するシコクシラベ・コマツガ・ゴヨウマツの実を好んで食べる高山鳥のホシガラス(ダケガラス又はブチガラスともいう)が住んでいる。これは、北方系の鳥で、石鎚は日本の分布の南限に当たる。また、メボソムシクイ・ルリビタキ・コルリなども、日本南限の貴重な繁殖個体群として知られている。昆虫類にも、ツマジロウラジャノメ・キンスジコガネ・アオアシナガハナムグリ・アカジマトラカミキリなども、北方系のものである。一方、南方系の昆虫類には、ツノクロツヤムシが、ブナやモミの倒木の中に住んでおり、面河渓には、クロコノマチョウ・イシガケチョウなどがいる。鳥類には、ヤイロチョウ・ブツポウソウなどもいる。
 以下、その特異なものを追ってみる。