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瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

(3)元怒和の生木地蔵(いきぎじぞう)(温泉郡中島町元怒和)

 元怒和の集落を見下ろす斜面に、麓からでもそれと分かるクスノキの大本群がある。近くによれば、クスノキは合計8本あり、いずれも株分かれしたように寄り添ってそびえている。もっとも大きいクスノキは胸高幹周は4m以上もある。各木の隙間の落ち葉を除くと、全本が一株となり、とてつもない大木となる。県内でも、あるいは全国でも有数の巨木である。
 中央のクスノキの地上から1mほどの部分に、大きめの鳥の巣穴に似た穴がある。その穴は縦横20cmほどで、覗くと穴が30cmほど奥まで続き、中は広い洞となっている。その奥に、朽ちかけた木片が立て掛けてあるのが見える。これが、地蔵尊であり、現在では面影はほとんど残っていない。これを生木地蔵というが、生木地蔵とは立木に直接彫り込んだ地蔵像のことである。樹木の内部にあるので、そこに彫りつけるためには、今より穴は大きかったはずであり、年月が経つにつれ、幹が肥大生長して穴を狭め、地蔵は完全にクスノキの内部に取り込まれ、そして地蔵が朽ちていったと考えられる。初めて見たときには、別に彫ったものを穴の中に持ち込んだのではないかと思ったが、すぐ下の寺の老婦人は、子どもの時の記憶として、地蔵は確かに生木に彫りつけたもので高さは50~60cm程度、穴は今よりもっと大きくて地蔵と同じほどだったという。
 県内には、生木地蔵としては、川之江市切山にカゴノキに地蔵を彫ったものがある。

写真2-3-3 元怒和の生木地蔵

写真2-3-3 元怒和の生木地蔵

平成3年11月撮影