データベース『えひめの記憶』
面河村誌
(五) 実業補習学校
青年教育とはいえ、いわば自発的な自主的修養団体であるが、最も組織的、意図的な青年教育は、小学校に付設された実業補習学校である。
この実業補習学校は「諸般ノ実業ニ従事シ又ハ従事セントスル児童ニ、小学校教育ノ補習ト同時ニ簡易ナル方法ヲ以テ、其ノ職業ニ要スル知識技能ヲ授クル所」として、明治二十六年「実業補習学校規程」が定められ、同三十五年改正規定が出された。
この改正規定が公布されてから、県内に実業補習学校が開校され始め、三十九年度には一二五校を数えるにいたった。上浮穴郡内には八校が開校されていることが本県教育史には記されている。
本村における開校のもようは詳ではない。ただ石墨小学校に残されている記録によると、石墨農業捕習学校は大正八年九月二日の創立となっている。また、同年五月十三日杣川尋常高等小学校にも併設されている。おそらくほぼ時を同じくして他の村内各小学校に付設されて開校したものでないかと思われる。
大正九年十一月二十六日 石墨農業補習校長 山本市次郎
上浮穴郡長 古川栄一殿
実業補習学校調査之件
一、学校名 杣川村石墨農業補習学校
一、創立年月日 大正八年九月二日
一、修業年限 三個年
一、学科 修身・国語・算術・公民・農業・家事裁縫(女子)
一、学級数 壹学級
一、教授の季節 毎年四月より翌年三月まで十二ヶ月中 日曜日、大祭祝日、農繁の期を除き、毎週隔日を教授日となす
一、現在生徒数 十七名
一、現在手当 年額(総額)四十七円
一、職員数 三
一、主なる事業概況
1 農業試作地における実習をなすこと
2 種子分与自宅農業実習作りの上作物の品評会を行うこと
3 学芸会、運動会を年度内に各一回を実施す。
4 修学(農事視察を主とせる)旅行を行うこと
以下石墨小学校に保存されている同校校長よりの各種報告文書を、当時の実業補習学校における青年教育の一端をうかがうよすがとして転載することとする。
3 使用教科書
一 国定高等小学修身書 巻ノ一(一二銭)巻ノニ(一四銭)巻ノ三(一四銭)
一 国定高等小学算術書 巻ノ一(一四銭)巻ノニ(一四銭)巻ノ三(一五銭)
一 国定高等小学家事書 巻ノ一(一四銭)巻ノニ(一五銭)巻ノ三(一五巻)
一 愛媛県教育協会著
愛媛県用農業補習読本 前編上巻(五〇銭)
同 前編下巻(五〇銭)
同 後編上巻(六〇銭)
同 後編下巻(六〇銭)
一 愛媛同窓会著
農業教科書 上巻(三〇銭)
下巻(三〇銭)
4 昭和九年七月七日 上浮穴郡面河村石墨農業補習学校長
愛媛県学務部長殿
実業補習学校専用設備等に関する件
備考 一 本校下は、比較的に水田の多き地方なれば、生徒をして之が実習を行わしむるは必要なることなり
二 堆肥舎を造り校地の雑草及び塵埃を以て堆肥をつくり自給肥料の範を示さんとす
三 本村内には農業補習学校六校あり、経費予算も手当の他に一校僅に一五円、この内より電燈料金を支払えば備品費は実に僅少なり