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愛媛県史 教 育(昭和61年3月31日発行)

三 愛郷心・愛国心の涵養(戦時下)

 昭和六年(一九三一)の満州事変、同七年の上海事変、同一二年の日中戦争と続く戦局の拡大は小学校経営において国体明徴・皇国教育の色彩をしだいに強めていき、愛郷心・愛国心の涵養を目指すようになってきた。
 西宇和郡川之石尋常高等小学校の昭和六年の教育方針は、「……日夜聖訓ヲ奉体シ赤誠二燃ユル有為有能ナル自覚的良民ノ教養ヲナスヲ以テ其ノ根本方針トナス」とし、教授にあたっては「……常二教材ノ郷土化郷土ノ教材化二留意シテ郷土ヲ教材ノ出発点トナサントス」とある。
 また温泉郡潮見尋常高等小学校の昭和一三年度の学校経営根本方針には、「時局ノ重大性卜地方ノ実情二鑑ミ常二御聖訓ノ御趣旨ヲ奉体シ……」として、次のような教育綱領を掲げている。
  教育綱領
 一、国体観念ヲ明確ニシ国民精神ノ涵養二努ム
 ニ、敬神崇祖ノ念ヲ敦フシ円滑ナル品性ノ陶冶二努ム
 三、郷土ヲ理解セシメ愛郷ノ念ヲ喚起スルト共二勤労精神ノ涵養二努ム
 四、児童ノ個性ヲ重視シ其ノ自己活動ヲ尊重シ各自ノ遺憾ナキ進展ヲ期ス
 五、教師ハ常二師道ノ確立二努ムルト共二時局ノ認識深化二努メ、以テ協同一致融和ノ実ヲ挙ゲ……
 六、常二郷土二即シタル教育ヲ行ヒ我が郷土ヲ新興セシムベキ素質ノ基礎陶冶二努ム
  (七・八・九・一〇を省略す)
 この二校ともに、郷土教育を前面に押し出し、愛郷心・愛国心の涵養を図っている。これが、本県の戦時下の、初等教育の動向であったと考えられる。