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愛媛県史 教 育(昭和61年3月31日発行)

一 郷土研究・郷土教育の芽生え(明治~大正)

 明治九年(一八七六)、愛媛県下等小学校教則(第八級~第一級、毎級六ヵ月課程)の第五級のところに、教科「読本(読法)」の中で本県地理書を教えるとあり、教科「問答」のところには、本県地図を教えるとある。このごろに郷土を理解させようとする芽生えを感じる。
 本県地理書は、明治一〇年三月、伊予師範学校長松本英忠が中心になり『愛媛県地誌略』、伊予之部と讃岐之部とを編集発行したものを使用している。
 同一一年下等小学校教則は、地域及び家庭の実情を勘案し、甲種・乙種・丙種に分けられるが、本県地誌略はどの課程にも使用することになり、重要視されていることがうかがえる。同一五年の小学校教科課程表によると第四学年前期に本県地誌略示位置づけられている。
 試験規則に基づいて実施される試験(月次・卒業・臨時)の具体的問題が、東宇和郡宇和町の開明学校に残っている。同一八年七月に実施した第四学年前期の地理科の卒業試験問題には愛媛県地誌略からも出題されている。
 (一)温帯中の春の景色  (二)地理学を学ぶ目的とするは如何  (三)三津浜の概況  (四)八幡浜より宇和島に行くには如何なる名称の村及び山坂を喩ゆる哉
 以上のことから考え、本県地誌略が郷土教育上大切な一端を担っていたことがうかがえる。明治一〇年(一八七七)という早期に『愛媛県地誌略』が教科書として編集されたことは、初代の師範学校長松本英忠の力によることが極めて大きい。