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愛媛県史 教 育(昭和61年3月31日発行)

3 昭和四〇年以降の水産教育

 水産科施設の近代化

昭和四四年(一九六九)、「えひめ丸」(総トン数四〇七・八九t、一、〇〇〇馬力)が竣工した。翌年、養魚池竣工。同四六年、産振教棟鉄筋三階建(航海計器実習室・航海牢習室・海洋気象実習室・水産化学実験室・天秤室・かん水増殖実習室・水産生物飼育室・冷凍室及び機械室・各準備室)が竣工した。同五二年、小型実習船「つるしま」(総トン数一八・六四t、一〇五馬力)が竣工。同五四年、漁艇「いたしま」(総トン数三・四七t、二〇馬力)が竣工。同五六年、三代「えひめ丸」(総トン数四九六・二六t。一、三〇〇馬力、定員六〇名)が竣立。同五九年、近代的な特別教棟鉄筋四階建(食品製造実習室、冷凍庫、ボイラ・煉製室、製造機器実習室、微生物実験室、裁培漁業実習室、運用実習室、被服室、食物室、各準備室)が竣工した。特に昭和四〇年以降施設・設備の近代化が行われ、県下唯一の水産高等学校としてその面目を一新した。

 水産科教科の構成

昭和四五年告示、同四八年度から実施の高等学校学習指導要領に基づき、各学科の科目の構成を、「水産一般・海洋実習」は共通科目として次のようにした。漁業科は「漁業、海洋・気象、漁船・運用、航海・計器、海事法規、水産法規、総合実習、乗船実習」とし、水産製造科は、水産製造、水産食品化学、水産食品衛生、水産製造機器、総合実習、簿記会計」とし、水産増殖科は「海洋・気象、水産法規、栽培漁業、操船、漁獲物処理、水産増殖、水産生物、水産土木、総合実習」とし、機関科は「海事法規、漁船機関、機械設計工作、船用電機、総合実習、乗船実習」とした。昭和四四年、機関科の専攻科が新設されて漁業専攻科を専攻科(漁業科・機関科)に名称変更した。教科・科目も次のように変更された。漁業科は「船舶衛生」を新設し、機関科は「英語海事法規、漁船機関、機関設計工作、船用電機、船舶衛生、機関乗船実習」となり、専攻科の定員は漁業科、機関科併せて一学年一〇名とした。また同五三年度より水産製造科・水産増殖科に女子も入学を許可し、男子の専門科目より六単位少なくして、家庭科の「家庭一般」四単位、「保育」二単位を履修させた。科目の構成は、新設したものと従前の科目を精選集約して統合・廃止したものとでできている。
 昭和五三年告示、同五七年度から実施の高等学校学習指導要領に基づき、各学科の科目の構成を、「水産一般、海洋実習」は共通科目として次のようにした。漁業科は「総合実習、漁業、航海、漁船運用、水産法規」。水産製造科は「総合実習、水産製造、水産食品化学、水産食品衛生、水産製造機器」。水産増殖科は「総合実習、栽培漁業、水産生物、漁場環境、操船」。機関科は「総合実習、漁船機関、機械設計工作、船用電機、船舶概要」とし、各学科とも、他に「地理・数学・英語・商業経済I・簿記会計I・航海・水産製造・漁場環境・漁船機関」の九科目の中から二科目(六単位)を選択履修させ、できる限り生徒の能力・進路・適性を考慮しながら、教育課程の弾力化に努めている。なお、科目の構成は過度の専門分化を避けて整理統合された。

 教科指導のねらい

昭和四〇年代は同四五年の高等学校学習指導要領に示された教科の目標を踏まえ、本県における真珠養殖業やぶり養殖業等をはじめとする「つくりとる漁業(栽培漁業)』の分野の発展に伴う新しい増養殖や漁業生産に関する技術・食品製造業の発展多様化等科学技術の進歩に対応するため、各学科及び科目の目標を明確にし、学習内容の精選と同時に実験実習の一層の充実を図り、年々整備された施設・設備を活用し視聴覚機器を利用する指導方法が研究された。昭和五〇年代は、同五三年の高等学校学習指導要領に示された教科の目標を踏まえ、世界的な二〇〇海里漁業水域の定着における我が国水産業の現状と将来、また本県の地域水産業の振興に寄与する水産教育が進められている。教科指導においては、幅広い知識・技術や応用力・創造力及び経営力を養う指導がなされ、また、基礎学力の充実・学習の習慣化・学習方法の工夫改善が図られている。
 一方、実験実習の充実、プロジェクト学習、一・五次産業教育の実践研究が進められるなど、地域と結びついた学習指導が行われている。
 昭和五七・五八年に県教育委員会から「水産一般、海洋実習、総合実習」の指導内容の手引き書と、県水産高校水産教育研究会から「水産一般」の指導資料が発刊され、その成果があがっている。

 実習船えひめ丸(三代)の竣工

昭和四四年(一九六九)建造された「(えひめ丸(二代)」の考朽化により、その代船として昭和五六年に建造された「えひめ丸(三代)」は、民間漁船の近代化・省エネ化及び漁船の建造技術等を十分に調査研究し、当時の造船技術の粋を集めた全国に誇り得る最新鋭の実習船である。水産高校実習船としては、全国で初めての漁獲物凍結室を上甲板に設けた省資源型船で、主機の回転数を歯車で減速し、大口径プロペラ(直径二・七五m)を採用して推進効率を高め、燃料消費量の節約を図っている。船の装備としては、人工衛星からの電波をキャッチして自動的に船の位置を出すハイブリッド航法装置やカラー魚群探知器など電子機器と自動制御機器が数多く積まれている。実習生・教官・乗組員の居住区など冷暖房が完備し、ビデオも備えられ、快適な船内学習今生活か送れるように配慮された、動く教室・実習場である。乗船定員六〇名で漁業科・機関科の本科及び専攻科の生徒を乗船させ、年三航海(一航海三か月)の実習を行い、将来たくましく有能な水産人及び船舶職員の育成に活躍している。

 教育の地域的特色

 〈地域に根ざした水産教育の実施〉 昭和五二年以降二〇〇海里漁業水域の定着による、我が国水産業岸本県の水産業の現状と将来及び生徒の能力・適性・進路などを踏まえ、宇和島水産高等学校では、地域社会に信頼され親しまれる、すなわち地域にしっかりと根をおろした教育が、昭和五三年度から積極的に進められた。同五五年、県高等学校研究指定校として「地域の期待にこたえる水産教育の推進」をテーマに研究実践している。この結果、地域水産業界及び水産研究機関などとの連携を密にした教育がなされ、教育効果も向上した。また、卒業生の就職状況もよく、国立大学水産学部にも毎年合格しており、特に卒業後の自営者が水産増殖科と漁業科の卒業生の四割以上となっている。保護者からも信頼され、地域の水産業界からは、宇和海の養殖漁業の担い手は水産高校卒業生であると高く評価されている。なお、地域社会に学校の施設・設備を開放し、一般社会人の水産に関する認識を高めている。また、地域の青年漁業者協議会と生徒の交流も深めている。
 〈水産科におけるプロジェクト学習の実践研究〉 宇和島水産高等学校は昭和五六・五七年度文部省高等学校教育課程研究指定校となり、同五五年度から全国水産高校に先駆げて学習指導方法の一つとして模索試行してきた「プロジェクト学習と学校水産クラブ」を研究テーマとして実践研究を進めて現在に至り、その成果が表われている。また、その実践的研究の成果が認められて、同五八年文部省初等中等教育局長から感謝状を授与された。
 近年、我が国の産業経済を取り巻く諸情勢の変化により、本県の高等学校における一・五次産業教育の存り方について、県教育委員会は先導的研究を行うため、昭和五九年(一九八四)宇和島水宗局校を研究指定校とした。