データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

愛媛県史 文 学(昭和59年3月31日発行)

四 戦後詩の出発と展開・現代詩壇の諸相(昭和後期)

 戦後詩は詩人の戦前・戦中への反省からはじまる。詩人の主体・自立的思想の不在が指摘された。沈黙を強いられた詩人たちの復活、個性的成熟をみせて再出発した詩人たちの狭義の戦後詩の時期は昭和三〇年をもってほぼ終わる。真の意味での戦後詩は、青春とともにあった戦時体験を主題として真正面に受けとめて、苦渋に満ちた重厚な詩風をもった詩であった。そして、それは内向性と屈折性を加え詩作に複雑な陰影を与える。昭和三〇年代になると新鮮な若い詩人が活躍するようになるが、これらの詩人たちと戦後生まれのさらに若い詩人たちがまさに現代の詩をささえるにいたる。言葉の意味性を拒否し情緒性へ挑戦する。詩人の存在確認衝動を主題として成熟と破砕とを内包する。