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愛媛県史 社会経済5 社 会(昭和63年3月31日発行)

一 県の世論調査から①

 最初に企画部企画調整課の実施した中学、高校三年生対象のアンケートを見よう。

 郷土に対する意向調査

 一九六〇年代のわが国の経済社会の急速な発展によって、本県においても若年労働力を中心に都市への人口流出がつづいており、一部の地域ではいわゆる過疎問題が生じている。
 この問題の解決は、わが郷土愛媛の調和ある発展と県民福祉の向上をはかるうえからも重要な課題である。
 こうした長期的課題に対応して、豊かで住みよい地域づくりをすすめるためには、次の世代をになう若者の意向がじゅうぶん県政に反映されなければならない。
 こうした観点で人口減少の著しい地域に住む、中学生、高校生について、郷土の現状や都会をどう認識し、その将来にどういう希望をもっているか等を中心に調査したものである。
 県下七一町村中、昭和四〇年~昭和四五年までの間に、人口が一〇%以上減少した三六町村から地域的バランスを考えて一五町村を選び、そこに所在する中学校から一一校、高等学校七校を選出、それぞれの学校の三年生全員を対象として合計一、九三六人を抽出している。調査は昭和四六年五月で、担任教師の指導のもとで行われた。
  ○あなたの住んでいる郷土についてどう思うか。
 全体的には六〇対四〇の割合で〝いなかはよい〟としている。
 よい面は、健康な生活ができる、親切で住みやすいを主とし、悪い面は、将来の発展性がない、生活が不便であるに集約されよう。
 とくに若者が将来に希望を託す「活気と発展性」という観点からすると、〝いなかは暗い〟と見ている。
  ○都会についてどう思うか。
 前者とは逆に六〇対四〇の割合で〝都会はよくない〟と考えているものが多い。
 よくない面は、災害が多く不安である。健康な生活が出来ない。反対によい面は、自由に仕事が選択できる。物資、情報量が多く文化生活ができる。と集約される。
 都会については、環境のわるさを認めながらも、自由と生きがい、物資的豊かさ、文化的生活を意識するものが多い。
  ○学校を卒業してから郷土にとどまりますか。それとも都会に出ていきますか。
 これに対する答えは、とどまりたい一四%、都会にでていく八六%で、学校の内訳、県内外の都会の別は図3-14の通りである。行く先も大半が東京・名古屋・阪神など県外の大都市希望で、松山など県内都市希望は二九%程度である。六割以上がいなかのよさ、都会のわるさを認めながら、都会にゆきたいという一見矛盾した考えがでている。
 そこで都会にゆきたい理由をみると、
「都会で自分の力をためしたい」「郷土ではよい生活ができない」が約七六%で、郷土にとどまりたい理由は「都会へはゆきたくない」「家庭の事情」という消極的なものが多く、両者で六〇%をこえているが、中には「郷土を豊かで住みよいところにすることに生きがいを感じる」と積極的姿勢のものも二〇%近くいる。そこで
  ○若いひと達が郷土にとどまるようにするためにはどんなことをすればよいと思うか。
 この回答は上図3-15の通りであるが、その上位にあるのは、通勤圏内に雇用機会を増やし、近くの都市との時間距離を短縮するとともに、生活環境を整備して、スポーツ等の関連施設を整備することと出ている。
 これらの考え方は地方の若者の全体意識とはいえないが、若者の現実生活から出た貴重な意見ではある。

 次には知事公室、愛媛県企画調整部秘書広報課、愛媛県調整振興部広報課、等が主査となって実施し、中央経済社、愛媛県等の発行になる、「県政世論調査」「県民のこえ」「県民意識に関するアンケート」等の中からテーマを選んで見たい。これらの調査は全県対象に毎回約一、二〇〇の成人を抽出して行われ、その回収率は約八〇%~九〇%である。
 なお実施は昭和四六年一〇月から、昭和六〇年三月までのを取り上げて見る。

 くらしの中で力を入れたいところ

 ○お宅では今後のくらしの中でどのような面に力を入れたいと思いますか。
多少質問の表現は違うが、問う目標は同じで、昭和四六年一〇月、昭和五五年三月、昭和五七年三月の変化を見る。先ず四六年のを示して見るが、これは「一つか二つ選んでください」という指示で、従って合計が一四〇・三%になるので、比較の場合は合計一〇〇%に換算して表示する。
 住居、子供の教育の面、貯蓄の面が主で、特に住居は東予、中予、教育は中予、貯蓄も中予が高く以前からの傾向が残されている。南予では住居が比較的低いが、食生活がその割に高く出ている。しかし一般には衣食足りて住へ、そして教育へ、その余裕を貯蓄へと経済成長の余波が歴然である。
 次に昭和五五年の結果を見よう。
 貯蓄が群を抜いて高くなっているのが目立つ。このことは、日常の生活費が増大し、貯蓄が出来にくくなった実態を示しているともいえる。
 上の表3-20は四六年、四八年、五五年で一位、二位、三位の項目を示している。
 次には昭和五七年三月調査の結果を見ると貯蓄が更に増加している。これも他面生活費の増加を裏書きするものと見られている。
 これを年齢別に見ると、食生活と答えた人は六〇歳以上に多く、住宅とした人は三〇歳代、貯蓄は各年齢で最も多いが、六〇歳以上の人は他の年代に比べて少ない。教育、教養は四〇歳代までに多い。
 次に四六年の数値を換算して五七年までの歴年比較をして見る。五七年三月発表の中に四六年との比較があるが、換算がされてないのでそのままでは問題があろう。
 食生活への希望は殆ど変っていないにも係わらず、住生活は漸減、教育費も減、それに反して貯蓄の増大の著しいことが歴然である。このことは衣食住生活や、レジャー等の改善されてきていることの現われと解釈されている。

 くらしについての感覚

 Oお宅の暮らしは、昨年の今頃に比べて良くなりましたか、それとも悪くなりましたか。
昭和五五年までは「悪くなった」が漸増であったが、五七年からはその傾向に転換があり、六〇年では四〇年代に戻っている。「良くなった」も多少もち直し気味である。

 階層意識

 Oお宅のくらしの程度は、世間一般からみて、次のどれに入ると思いますか。一つ選んでください。
 階層は上、中の上、中の中、中の下、下、わからない、に分けられている。
 昭和五五年、同五七年、同五九年、同六〇年の結果を円グラフで表しているので、そのまま提示してみる。
 五五年中流意識が八六・一%を占めた。この結果は昭和五三年四月に内閣総理大臣官房広報室が実施した結果(中流意識八九・八%)とほぼ一致している。
 五七年中流意識は八二・三%で、前回の結果と比べると、「中の中」と答えた人が減少し、「中の下」と答えた人が三・四%増加し、中流意識を示した人が三・八%減少している。「上」が変わらないで、「下」が増えている。
 なお昭和五六年(一九八一)総理府広報室が実施した調査結果と比べると「中流意識」を示した人は、今回の調査の方が六・一%少なかった。
 五九年度中流意識は八一・三%に減少している。
 最後に六〇年度を見ると更に減少して、「中流意識」をもっている人は八〇・九%となっている。
 これらの経年比較を図示してみよう。図3-24
 次第に中流意識の低下が見られるのは、全体の生活レベルの向上が見られたためであろう。

 生きがい

 ○あなたは、日常生活の中で、どのようなことに生きがいを感じていますか。
昭和五三年の結果は表3-22の通りであった。
 健康第一、幸福な家庭第二であとは一〇%以下となっている。
 次に昭和五七年と、同五九年の結果を見よう。前回と全く同じ選択肢ではないが、共通性はかなりある。
 上位はあまり変化はないが、前回になかった「老後の安定をはかること」が五七年度では四位であるのが目につく、とともに「仕事に打ちこむ」が前回五位であったのが、はるかに後退している。

 定住意識

 昭和五四年調査によると、
 Oあなたは愛媛県に住んでよかったと思いますか―の回答は
 よかったと思う―八四・〇%、よかったと思わない―ニ・六%、わからない―一三・四%で、
 ○あなたはずっと愛媛県に住みたいと思いますか―の回答は
 愛媛県に住みたい―九〇・一%、別のところに住みたい―三・七%、わからない―六・二%。
 一〇人のうち九人までが、〝愛媛県に住んでよかった〟と思い、さらに〝ずっと愛媛県に住みたい〟と考えていることがわかる。そのずっと住みたい理由は上の通りで、地縁、血縁をあげる人が六六・六%で大半をしめている。続いて仕事関係、人情味をあげている。次は昭和五九年の調査を提示する。これも全く同じ選択肢ではないが、共通点はあろう。
O現在住んでいる所の住みごこちはどうか。
〝どちらかといえば住みよい〟と答えた人が約五割と最も多く、第二位の〝住みよい〟を合わせると八二・五%が肯定的な評価をしている。逆に否定的評価をする人は一一・一%と少なく、全体的には本県の居住環境に及第点を与えている。
 この住みよい点と、住みにくい点め理由をあげさせると、住みよい理由は〝自然環境がよい〟が約七〇%で最も多く、ついで〝食べもの〟〝人びとの人情〟をあげ、上位三項目で全体の相当部分を占めている。前回と設問の違いもあるが、地縁、血縁は現れていないが、人情味は指摘されている。
 住みにくい理由としては、生活環境施設や、就業環境の不備をあげる人が多い。しかし住みよい点に比べると全体的にはバラツキが見られ、住みにくさの決定的要因となるものは表れていないと指摘している。

図3-14 卒業後の行き先

図3-14 卒業後の行き先


図3-15 郷土を住みよくするために望まれる対策

図3-15 郷土を住みよくするために望まれる対策


表3-19 くらしの中で力を入れたい点(昭和46年10月)

表3-19 くらしの中で力を入れたい点(昭和46年10月)


図3-16 くらしの中で力を入れたい点 昭和55年3月

図3-16 くらしの中で力を入れたい点 昭和55年3月


表3-20 くらしの中で力を入れたい点(昭和55年3月)

表3-20 くらしの中で力を入れたい点(昭和55年3月)


表3-21 くらしの中で力を入れたい点(昭和57年3月)

表3-21 くらしの中で力を入れたい点(昭和57年3月)


図3-17 くらしの中で力を入れたい点 昭和57年3月

図3-17 くらしの中で力を入れたい点 昭和57年3月


図3-18 くらしの中で力を入れたい点 経年比較

図3-18 くらしの中で力を入れたい点 経年比較


図3-19 くらしは良くなったか、悪くなったか(経年比較)

図3-19 くらしは良くなったか、悪くなったか(経年比較)


図3-20 階層意識(昭和55年)

図3-20 階層意識(昭和55年)