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愛媛県史 社会経済2 農林水産(昭和60年3月31日発行)

第一節 藩政時代の振興施策


 藩政の漁業施策

 藩政時代の補助施策について宇和島藩の場合を例にとると、文化~天保時代の九島から日振島までの庄屋に対する通達で、漁船建造のため当時入手難であった木材の払下げを許可したり、さらに江戸時代末期の元治年間に、鰯網漁業や鰹釣船に対する漁業資金として、網一帖につき銀二貫目~四貫目を貸付けるなどの助成策を講じているほか、中期の宝暦年間には網の修覆基金として藩の補助金と漁業者自身からの引除金によって催合銀制(共有積立金制)を創設し、漁業経営費に対する融通の途をひらいた。
 漁港については西宇和郡保内町の喜木津漁港は吉田藩か天和二年(一六八二)に地元部落民の共同作業によって御船場を建造して、江戸との中間交通拠点として利用したところから、本港の築造はこれ以前に行なわれていたことになる。また同町の磯崎漁港も宇和島藩が江戸との中継地として防波堤を村民の共同作業によって築造されたものである。このほか出海漁港・喜多灘漁港は新谷藩、櫛生漁港・肱川口漁港は大洲藩がそれぞれ築造したといわれるように、藩政時代各藩では一部の主要漁業根拠地において、すでに築堤による小規模な漁港の修築を行ない漁業生産基盤の整備が行なわれていた。