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愛媛県史 社会経済2 農林水産(昭和60年3月31日発行)

二 赤潮の種類と発生回数


 赤潮の発生

 昭和四三~五六年の本県内で発生した赤潮プランクトンの種類を多発した順に列記すれば、夜光虫が最も多く、次いでヘテロシグマ・ギムノディニウム・プロロセントラムが多く発生している。発生回数の少ないものとしてはロドモナス・コクロディニウム・ギロディウム・ペリディウム・ゴニオラックス・セラチウム・ポリフレファミダス・スケレトネマ・珪藻類・海産ミドリムシ・ユートレプチア・ヘミュートレプチア・ピラミモナス・メソディニウム・鞭毛虫類・二枚貝幼虫などである。本号で発生回数の多い六種について形状、色相などを図8-7に示したが、このうち夜光虫・スケレトネマ・プロロセントラムなどは水産への影響は殆どみられないが、その他については赤潮の濃度如何によっては水産被害をもたらすことがある。
 次に本県地先海域における昭和三五年頃の赤潮の比較的少ない年代の発生状況と五〇年の発生状況を図8-8に示したが、発生回数も少ないうえ、発生時期もおおむね春期~夏期に限定され、被害の少ないノクチルカを中心に小規模の発生が多かった。
 さらに本県地先海域における昭和四二~五六年の赤潮発生件数及び被害件数を図8-9に示したが、これでみると本県は昭和四七年より発生件数が一一件に増加し始め、四八年一六件、四九年二〇件と漸増し、五〇年には三〇件へと急増しピークに達したが、これを境に翌五一年には六件へと激減し、その後は小康を保っている。本県の五〇年度における赤潮発生件数を海区別にみると総件数三〇件のうち燧灘が一五件と半数を占め、次いで宇和海が一一件で三七%、伊予灘が四件の一三%となっており、工場立地の多い東予地先の発生が最多であったが、その後はきびしい排水基準の法規制の影響もあり、殆ど発生はみられなくなった。伊予灘は工場立地も少なく、もともと清浄な海域として瀬戸内海の海洋環境の指標となっているところであり、従来から赤潮の発生はほとんどみられなかったが、五一年以降は全くみられない。一方宇和海は五〇年にピークを示した後急減したが、五三年頃より再び発生回数が増加している。これは都市化の伸展もあるが魚類養殖の局地的な過密放養と海中への直接投餌という養殖条件のさけられない宿命にも原因があると推察される。
 次に瀬戸内海全域の赤潮の推移をみると、本県同様昭和四六年頃より漸増し、五一年の三二六件をピークとして減少し、五六年は一九九件と約六〇%の発生にとどまっている。これは瀬戸内海環境保全特別措置法に基づく汚染負荷割当量の減少により排水の浄化が進んだためと思われる。
 なお赤潮発生に伴う漁業への被害件数についてはそれぞれ図示したとおりであるが、本県では昭和五〇年の三件が最高で全般的に非常に少ない。

図8-7 愛媛県で発生した主な赤潮プランクトン

図8-7 愛媛県で発生した主な赤潮プランクトン


図8-8 赤潮発生海域図(昭和35年・50年)

図8-8 赤潮発生海域図(昭和35年・50年)


図8-9 愛媛県海区別(昭和42~56年)赤潮発生件数・被害件数

図8-9 愛媛県海区別(昭和42~56年)赤潮発生件数・被害件数


表8-11 赤潮による漁業被害一覧

表8-11 赤潮による漁業被害一覧