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愛媛県史 社会経済1 農林水産(昭和61年1月31日発行)

一 品質の均質化と製品特異化


 二元集出荷体制

 第六章第三節でみたように、広域選果場の問題点は、集荷範囲が極端に広く、地区によって品質ならびに出荷適期が異なることである。たとえば伊予園芸農協管内は、海岸、平坦、山間にわたる一市四町をふくみ、土壌、標高、成園比率などそれぞれ相違し、品質差が大きい。そこで組合は、管内の代表的地区を選び、時期別にミカンの糖度・クエン酸・PHなどを調査し、この資料にもとづき、四〇年産ミカンから、管内の生産地域を海岸・平坦・山間・山間奥地の四地区に分類し、時期ごとにABCといった品質ランクを設け、時期と地区を組み合わせてグループを編成し、グループごとに選別荷造りを行うことにした。これを「時期別地区別出荷方式」と呼んでいるが、伊予園芸農協は、愛媛県で最初に実施した産地である。
 四七年の価格暴落以後は、このような地帯や標高による区分から、園地による区分、さらに生産者(農家)による区分といった一層きめ細かな方向に進んだ。たとえば越智園芸連では、地帯区分→園地区分→家庭選別→搬入区分といったシステム化をはかるとともに、四八年から兼業化への対策として、生産意欲・労働力・果実評価などの実態によって、組合員をA、Bの二グループに分け、それぞれ別々に選別荷造りを行うことにした。これを「二元集出荷体制」と呼んでいるが、市場選択ないし製品特異化とも関連していることはいうまでもない。

 製品特異化

 製品特異化には、系統による特異化と品質による特異化の二形態がみられる。系統による特異化は、南柑二〇号をはじめ、青島・十万・宮川早生・興津早生など系統名を出荷容器に明示した販売であり、愛媛県でも、やはり四七年以降、一部産地で実施されるようになった。品質による特異化は、「特選品」という形態による特異化であり、愛媛県で本格的に実施されるようになったのは、前掲の二元集出荷体制とほぼ同時期で、代表的なものとして、サンベニー(越智園芸連)、エース(伊予園芸農協)、ONS(温泉青果農協)、さらに五〇年からのマル喜トップ(長浜青果農協)、五三年からのゴールド(西宇和青果農協)などをあげることができる。これら特選品は、園地指定を行い、品質も厳選されているので、一般品よりかなり高値で販売された。しかし、特選品にみあう品質のミカン(園地)は限られており、出荷量はそれほど多いものではなかった。なお、食品の安全志向が強まり、無農薬や有機栽培のミカン、ノーワックスのミカンが表示販売されるようになったが、これらも一種の特異化とみられる。