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愛媛県史 社会経済1 農林水産(昭和61年1月31日発行)

一 栽培技術の動向


 経費節減・品質向上技術の展開

 これまでミカンの栽培技術は、増収を中心に展開されてきたが、四〇年代に入り、コスト節減ならびに品質向上をねらいとする技術が強く要請されてくる。第一のコスト節減に関連した技術として、「樹型改造」をあげることができる。園内道の整備、機械化、作業能率の向上などのために、開心自然形の樹形を「刈込みせん定」や「垣根状せん定」によって、収量を低下させないように直方形に改造するもので、果樹試験場で実用試験が行われたほか、一部の先進農家や構造改善事業実施地区でも実施された。つぎに、摘果作業の省力化を目的とした「摘果剤」の導入があげられる。これは、ミカンの開花後一か月前後に摘果剤の散布を行うことによって落果を促進し、摘果作業を省力化するとともに、果実を肥大させることで収益を高めようとするものである。これに類したものとして「除草剤」があげられる。なお、省力化のための機械の導入は、とくに「動力草刈機」、「モノレール」などに急速な普及がみられた。
 第二の品質向上に関連した技術として、既設園の栽培管理面では、施肥(窒素肥料の抑制、リン酸肥料の施用など)、土壌管理(深耕、土壌乾燥、かん水の有効散布)などに新しい動きがみられた。また採収から出荷までの品質管理面では、適期採収、分割採収、出荷予措など、出荷団体の強い指導のもとに、徹底して行われるようになった。さらに、新植ミカン園の品種系統の選択や、既設園の品種更新の動きも活発化し、愛媛県でも、柑橘類の優良品種および検討品種を選定するなど、その対策に努めた。そのばあいの更新技術として、高接更新、改植更新などの方法が積極的に検討され、とくに接木方法の改良に成果がみられた。夏ミカンの更新には、高接更新がすでにかなり採用されていた。