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愛媛県史 社会経済1 農林水産(昭和61年1月31日発行)

一 農業基本法と果樹農業振興特別措置法


 農業基本法

 昭和三六年、農業の発展および農業従事者の地位の向上を図るための基本的な目標を定めた農業基本法が制定された。これは、他産業との生産性の格差を是正するための農業生産性の向上、農業従事者が他産業従事者と均衡する生活を営むことのできる所得の増大など、今後の日本農業の進路を規定する上で極めて重要かつ画期的な法律であった。
 この法律の一つの特色は、需要が増加するとみられる農産物の生産を増進し、需要が減少するとみられる農産物を転換させるといった、農業生産の「選択的拡大」を積極的に推進しようとしたことである。そのため「農産物の需要および生産の長期見通し」の公表が義稗づけられた。しかし、この法律の最も中心的なテーマは、農業構造の改善であった。すなわち、農業構造改善事業を核として、経営規模の拡大、農地の集団化、家畜の導入、機械化、農地保有の合理化、農業経営の近代化など、基盤整備事業とともに大規模な集団的生産および集出荷の近代化事業が全国的に大規模に展開されたのである。この法律にもとづく諸施策は、後述するように、愛媛県農業、とくに果樹農業に多大の影響を与えた。

 果樹農業振興特別措置法(果振法)

 この法律は、果実の需要動向に即応してその生産の計画的かつ安定的な拡大を図るための措置、これに関連して合理的な果樹園経営の基盤を確立するための措置、並びにこれらにあわせて果実の流通および加工の合理化に資するための措置を定め、果樹農業の健全な発展に寄与することを目的として、昭和三六年に制定されたものである。これには、まず国が、果樹農業の振興を図るための基本方針(果樹農業振興基本方針)を定め、政令で定められた主要果樹について、次に掲げる事項を定めるものとしている。

 (一) 果実の需要の長期見通しに即した植栽および果実の生産の目標。
 (二) 植栽に適する自然条件に関する基準。
 (三) 近代的な果樹園経営の基本的指標。
 (四) 果実の流通および加工の合理化に関する基本的事項。
 (五) その他果樹農業の振興に関する重要事項。

 これをうけて、各都道府県も、それぞれのところにおける果樹農業の振興を図るための計画(果樹農業振興計画)を定めることにしている。


 植栽および生産の長期見通し

 果樹農業振興特別措置法第二条第一項による最初の長期見通しが、昭和三七年五月に公表された。これは三四年を基準年次として四一年および四六年を見通したものであった。これによると、とくにミカンは、四一年および四六年の生産量が一二二万tおよび二一九万t、需要量がそれぞれ一七六万tおよび二九七万tと見込まれており、大幅な供給不足が予想されている。この需給予測と一連の不足ムードが、その後のミカンの新植ブームに拍車をかけたことは否定できない。