データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

愛媛県史 社会経済1 農林水産(昭和61年1月31日発行)

一 試験研究体制の拡充


 南予柑橘分場設置

 農業恐慌のなかで、果樹栽培の関心が一段と高まり、とりわけ柑橘類の生産が急速に伸長する情勢となった。大都市市場における本県産の温州ミカンや夏柑は、その品質において先進産地をしのぎ、日本一の評価をうけるようになった。この果樹栽培の発展につれて、栽培農家や果樹団体から、栽培技術の指導、試験研究の充実が要請されるようになった。当時の果樹行政は、必ずしも果樹生産の急速な成長に積極的に対応したとは言えない状態であった。南予の柑橘生産者は、昭和七年吉田町に南予園芸大会を開き、「農事試験場南予分場」の設置請願を決議し、土地建物等設備一切の寄附も辞さないという強い運動を展開した。県は昭和八年、東宇和郡玉津町(現吉田町)に「南予柑橘試験地」を設置して要望にこたえ、翌九年「南予柑橘分場」に昇格、分場長には村松春太郎技師が就任した。この分場は、南予一帯の果樹生産者の物心両面の協力によって実現したこともあって、真に南予の栽培技術の殿堂となり、県下及び全国的にも注目されるものとなった。

 東野果樹試験地

 中予地帯においても、園芸政策の強化を求める要請が続けられていたが、昭和一二年東野の果樹園が、果樹試験地に昇格し、藤原一技師を主任として本格的な果樹の試験研究が開始されることになった。当時他県に比して、果樹に対する試験研究の人員、予算ともに貧弱であったことは、裏返せばそれだけ本県の果樹栽培が急速な伸長を遂げたことを示すものであったとも言えよう。(表4-6)

 試験研究事項

 昭和初期の試験研究は、梨についての肥料試験、人工交配、病虫害防除(姫心喰虫・介殼虫・木虱など)、その他の落葉果樹では、桃(縮葉病)・ブドウ(房枯病)・柿(蒂虫・大綿介殼虫)・栗(胴枯病、ゴマダラ螟蛾)・枇杷(鉢巻ダニ)などの防除試験、柑橘類については、病虫防除(介殼虫・赤ダニ・あぶら虫・落葉病)、肥料試験、薬剤の効果試験などが実施されていた。
 その後、南予分場、および東野果樹試験地の設置によって、試験研究の幅が拡大充実されると共にその比重が柑橘類におかれるようになった。特に南予柑橘分場の試験研究領域は、広く農法の改善につながるものにまで進められた。これら多くの試験研究事項を集約して下記に掲げる。

○ 柑橘系統比較試験及温州ミカン、早生温州優良系統選抜試験。
○ 母樹園及柑橘種類見本栽培。
○ 砧木(中間砧木を含む)比較試験。
○ 穂木造成ならびに切接、芽接に関する試験。
○ 優良苗木の育成配布。
○ 肥料試験(柑橘土壌の三要素試験)
○ 剪定、整枝、摘花(果)に関する試験。
○ 病虫害防除及薬害効果試験。
○ 隔年結果防止、温州ミカン浮皮防止試験。
○ 緑肥、敷草、被覆物に関する試験。    
○ 果実発育調査及貯蔵試験。        
○ 柑橘耐寒性の研究。
○ 晩成柑橘試験、伊予柑越冬試験。
○ 柑橘類に対する灌水試験。

表4-6 柑橘関係試験研究の予算比較 (昭和一二年)

表4-6 柑橘関係試験研究の予算比較 (昭和一二年)