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愛媛県史 社会経済1 農林水産(昭和61年1月31日発行)

第三節 利用していた野生植物


 栽培していた作物のほかに、採取して食用その他に利用していた自生の植物と思われるものに次の八〇余種類がある。その数(とくに野菜類の数)は前記の作物の数に匹敵するが、多種類にわたるこれらの豊富な野生植物は、周到な肥培管理をしていた米麦以外の、植えて穫る程度の粗放的な栽培であった野菜類・特用作物・果樹類などとは明確に峻別されていなかった準作物で、農民生活を支える重要な柱であったと考えられる。

          利用していた野生植物

 1  穀 類  野(くさかんむりに皇)菜(野生のかずの子草・実を食用)

 2 豆 類  くず豆(はっしょう豆)・野大豆・晩大豆・晩大角豆

 3 いも類  薯(ながいも・自然芋=山芋・つくね芋) 野老(ところ・おにどころ)・野唐蕷・つぶらめ・ほど(ほ
         どいも)・嶋芋(里芋の一品種)・えこいも(えぐいも 同)

 4 野菜類 (1)茎葉菜類 野蕎麦(葉を食用) たびらこ・三葉芹(みつば)・しい草(すいば)・笋(竹の子)・あ
           かさ(あかざ)・かまつか(はなた=つゆくさ)・鶯菜(あすな)・むかご(長芋の茎の珠芽)・びんつ
           り(たかなの子)・よもきな(よもぎ)・蓬菜(よもぎ)・かつらな・九十菜(くさぎ)・独活(うど)・
           ぜんまい・紫竹の子・河苣(かわじしゃ)・はせ(ぎしぎし・若葉を食用)・枌(はるにれ 同)・い           
           たどり・きんきらい(さるとりいばら)山帰来(さるとりいばら)・すべりひゆ・つわ
           (つわぶき)・防風(ぼうふう)・いひら(ひゆ)・たんほほ(たんぽぽ)・子持菜(のげし)・土筆(つ
           くし)・おばこ(おおばこ)・晩蕨(わらび)・雉子の尾(やぶそてつ―若芽を食用)・たひらこ(こお
           にたびらこ)・仏の座(ははこぐさ)・たかな(あおな)・蕗のとう・けし葉(からしな)
         (2)果菜類 西瓜・ばうふう(南蛮夕顔・かぼちゃ)・覆盆子(いちご)
         (3)根菜類 蓮根・ゆりの実(ゆりの根)・野大根
         (4)菌  類 松茸・岩茸・〆治(しめじ)

 5 特用植物 山苧・葛根(くずの根)・わらび根(わらびの根)・あさつき・仙大黄(薬用)・くちなし(花を薬用)・
         すぎな(薬用)・竹(から竹・野竹・紫竹・淡竹・若竹・川竹)

 6 果樹類  あけみ(木通・あけび)・枇杷・李(すもも)・くるみ・棗(なつめ)・銀杏(いちょう)・柚(ゆず)・
         山葡萄・柿(木沢柿)・かや(実を食用)
       不詳植物―つさ・節くつれ・くわしろ(根を利用)

 三間郷は水田地帯であるが、田畑面積の二倍を超える山林が存在する点に地域の特徴がある。もともと農村は田、畑、山林の複合的統一体で、村落の自立にとって、山の存在は不可欠の要件であったが、三間郷はその要件を具備する典型的な農村であり、村の暮らしを援げていた右に見る豊富な野生植物の多くは、この山林からの採集物であったと思われる。