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愛媛県史 地誌Ⅱ(東予西部)(昭和61年12月31日発行)

一 観光資源

 水軍観光ルート

 越智諸島は、広島県と愛媛県が共同で開発した「水軍観光ルート」に当たる。瀬戸内海大橋の架橋によって、この地域に点在する風光明媚な多島海の景観を楽しみつつ、山陰島根県を起点に本ルートを通過して、南予レクリエーション都市を経由、高知の足摺岬(足摺宇和海国立公園)に結ぶこの南北ルートは、どの地域にもみられない多様性に富んだ、国際的な観光周遊ルートとしてすばらしいものが想定される。
 瀬戸内海に浮かぶ島々は多島海として特色ある景観をつくりあげている。その景観のすばらしさが人々から讃美され、早くから瀬戸内海国立公園の指定を受けた(昭和二五年五月指定、昭和三一年五月拡張指定)。芸予諸島さらにその一画の越智諸島は備讃瀬戸と並んでその代表格である。
 芸予諸島は古来東西交通の要衝であり、広く海外とのかかわりをももった「海の文化」の歴史の舞台であって、多くの文化遺産に恵まれている。そして今なお、山陽側の大動脈と四国側の大動脈とを結ぶ南北の航路が輻湊している地域でもある。三原-今治の航路は、明石-淡路島-鳴門、宇野-高松と共に輸送量が多く、瀬戸内海の幹線航路である。この南北を結ぶ重要航路は、さらに架橋の促進によって自動車交通による本四連絡への道を歩みつつある。越智諸島においては、既に昭和五四年三月に大三島橋の完成をみており、現在では伯方・大島間の架橋工事が進行中であって(五六年三月着工、六二年度開通予定)三島(大三島・伯方島・大島)一体化の新次元に入るのも間近とする認識が定着しつつある。
 瀬戸内海地域の主な観光資源の分布をみると、沿岸部は人文系資源(社寺・史跡等)を中心とする観光地が多く、臨海部から島しょ部にかけては自然系資源の優れた地域であって、広大な瀬戸内海国立公園エリアに指定されている(図5-52)。越智諸島は、「観光レクリエーション調査(日本交通公社)」によると、自然系資源よりも人文系資源にランクの高いものが多い。特に大三島に資源集積が大きく、かつ上位ランクの全国的誘致力をもつ資源が多い。そこには島しょとしての制約の中から醸成された地域文化、地場産業と瀬戸内海というわが国の文化的伝播軸に由来する歴史的資源、さらにはこれらの歴史・文化的蓄積を可能としてきた自然、土地の諸条件との織りなす美しさがある。これらの多島海のスケールと水軍文化は瀬戸内海においても特異なものをもっており、架橋建設を含めて、観光レクリエーション的地位は高まるとみることができよう。


 観光客の動向

 瀬戸内海地域の観光流動は、明石-淡路島-鳴門、岡山-小豆島-高松、尾道-生口島-大三島-今治-松山の三つが主軸であり、その他は沿岸都市域とのピストン流動が中心となっている。すなわち大三島のように入込規模の比較的大きい島は、島しょ資源の広がりを含め広域流動観光への対応性を示しているが、他の島々は周辺都市住民のレクリエーションの場として、海水浴、釣りの場として利用されているにすぎない。従って月別変動は大きく、夏季一期型を示す場合が少なくない。
 瀬戸内海国立公園内の海と緑と自然は、これまでの「観られる」資源としてではなく、行動し、触れ、参加する資源としての価値、さらには、民俗文化を含めていわゆる「レクリエーション」的捉え方から再評価されるべき資源であるとするなら、越智諸島にはきめ細やかではあるが各種の資源が豊富である。

図5-52 越智諸島のおもな観光資源

図5-52 越智諸島のおもな観光資源