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愛媛県史 地誌Ⅱ(東予西部)(昭和61年12月31日発行)

一 本四連絡橋

 建設の経過

 昭和四五年七月、本州四国連絡橋公団が設立され、建設省、日本国有鉄道、日本鉄道建設公団、日本道路公団が土木学会等の協力を得て昭和三〇年来行ってきた各種調査を引き継ぎ、建設・運輸両大臣の指示に基づき、神戸・鳴門ルート、児島・坂出ルート、尾道・今治ルートについて工事実施のための調査を行った。しかし、昭和四八年一〇月工事実施計画の認可をうけ、工事着手の矢先に当時の経済情勢により、総需要抑制策が打ち出され、一時着工は延期された。
 その後、政府が決定した当面の建設方針に基づき、昭和五〇年一二月大三島橋、五一年七月大鳴門橋、五二年一月因島大橋の三橋が起工式をあげた。
 道路鉄道併用のルートは、昭和五二年一一月決定の第三次全国総合開発計画において児島・坂出ルートとすることが決定され、昭和五三年一〇月に着工した。五四年一月には伯方・大島大橋が事業化を図る橋梁として追加され五六年三月に着工している。なお、大三島橋は五四年五月に、因島大橋は五八年一二月に開通している。
 連絡橋の建設に当たっては、自然環境、生活環境等の保全について、対策を充分に講じ、架橋によって影響を受ける旅客船の問題については、昭和五六年六月に制定された「特別措置法」に基づき、また港湾運送の問題については、昭和五九年六月に定められた「対策事業実施要綱」に基づき対策が進められている。
 尾道・今治ルートは一般国道三一七号の改築事業として行われる。尾道市で国道二号バイパスから分岐し、尾道水道を渡って向島へ、さらに因島・生口島・大三島・伯方島・見近島・大島を経て来島海峡を渡り今治市で国道一九六号バイパスに連絡する総延長六〇kmの建設である(図5-28)。大三島橋・因島大橋の完成に続き、伯方・大島大橋の建設が急ピッチで進んでいる。
 本州四国を結ぶ高速的、直線的連絡の要請からすれば架橋の島々は通過交通地の橋桁としての役割しかもてないと考えられているが、尾道・今治ルートは、他の二ルートにはない関係離島の開発をあげている。四国の離島性解消は西瀬戸経済圏の成立と過密化防止のねらいと合わせて重要な意味をもっている。かつては、各島々の部落や港が個別的に渡海船やフェリーによって今治市や尾道市と結ばれており、島相互や部落相互の結びつきは弱かったが、架橋が進行することによって、果樹栽培、栽培漁業、近代的造船業、国際的観光資源、伝統的文化財など、それぞれの島々が有機的分担をはたし、地域経済の広域化が促進されようとしている。


 大三島橋の利用状況

 昭和五〇年着工以来、三年五か月の工期と約一九〇億円の建設費を投じて、昭和五四年五月一二日完成した大三島橋は、鼻栗瀬戸によって隔てられていた大三島と伯方島を結ぶ橋長三二八m、支間二九七mの東洋第一のアーチ橋である(図5-29)。部分橋としての大三島橋は普通車七〇〇円、大型車一一〇〇円、特大型車二〇〇〇円、軽自動車五〇〇円の料金によって利用が開始された(写真5-27)。
 大三島橋管理事務所の資料によれば、開通以来車の利用台数は着実に増加している。五か年間の結果をみると月別の一番大きなピークは八月であり、ほかに一月と五月に小さなピークがみられる(表5-54)。八月、一月は盆と正月の帰省客による交通量の増加を示すものであり、五月は大山祇神社大祭のためである。これはトラフィックカウンターによる二四時間の集計である。料金収受時間、六:〇〇~二〇:〇〇内の車種別台数によると普通車は開通当初の五七%から年をおって比率が低下して五九年度には五一%になり、かわって軽自動車三九%から四六%へと増加している(表5-55)。二〇時以降でも通過料金は運転者自身の手によって納入される建前となっているが、料金箱にほとんど入っていない。ちなみにトラカンによる時間帯別通行台数のうち二〇:〇〇~六:〇〇の通過量は四万九二七三台(二二・〇%)である(表5-56)。
 部分橋としての大三島橋がもつ効果を伯方島にみれば、本州との連絡において、井ノ口~三原間のフェリー利用が多くなり、尾道方面へ向かうよりも便利であるという点ぐらいで、生活道路としての大三島橋のもつ意味は小さいと評価している。伯方島にとっては目下建設中の伯方・大島橋には大きく影響されるとみており、フェリー、高速艇の再編成を余儀なくされている。大三島からみた大三島橋の効果は、病院や警察署への所用、或いは造船所勤務などの面において人の往来がみられるようになったことである。伯方町に越智諸島の公共機関が比較的集まっていることによるものであろう。
 大三島橋がかかるまでの両島の交通は、瀬戸浜(上浦町)と熊口(伯方町)を結ぶフェリーボートによって結ばれていたが、フェリー関係者六人は、二人ずつの三日交代制で大三島橋管理事務所の料金収受員として働いている。

図5-28 尾道・今治ルート

図5-28 尾道・今治ルート


図5-29 大三島橋一般図

図5-29 大三島橋一般図


表5-54 大三島橋の交通量の推移

表5-54 大三島橋の交通量の推移


表5-55 大三島橋の車種別交通量の推移

表5-55 大三島橋の車種別交通量の推移


表5-56 大三島橋の時間帯別車両通行台数

表5-56 大三島橋の時間帯別車両通行台数