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愛媛県史 地誌Ⅱ(東予東部)(昭和63年2月29日発行)

二 周桑平野の金属・機械工業

 臨海用地の造成と住友の進出

 昭和三九年に指定された東予新産都市の中核、東予市の象徴であった四号地と呼ばれる臨海造成地から、五九年末に住友アルミニウム製錬東予工場が撤退した。また、東予港をはさんだ東隣りの三号地に立地する住友重機械工業も、六一年末に大幅な人員の縮少を発表した。昭和六二年、臨海工業地帯は雑草に覆われている(写真2―19)。
 図2―19のごとく、同市北条の地先に農林水産省がもともと造成していた七〇万平方mの干拓地の払い下げを受け、この干拓地の地元をさらに七四万平方m埋め立て、四号地として住友化学の菊本・磯浦に次ぐ県三番目のアルミ工場の建設計画が四五年に発表された。さらに払い下げられた干拓地にはアルミの加工など関連企業の誘致が予定された。また、港湾整備にも取り組み、五か年計画で四四年から東予港建設にかかり、三号西の旧飛行場跡付近にフェリー岸壁、四号地西に公共埠頭の整備を進めた。臨海道路も国道一九六号から埋め立て地までの接続道路がつくられ、四五年からアルミ工場の建設が始まり、四八年には年産八万五〇〇〇トンの精錬工場の操業を開始した。最終的には年産二五万トンの全国でも最大規模の工場にする計画であった。それに伴う電力も四号地内に住友共電壬生川火力(二五万kW)が四五年に建設に着手された。四号地は県の手で完成し、工事資金は住友化学(住友アルミの親会社)が予納金の形で払い、壬生川地区全体の造成地は住友が責任をもって立地を推進する計画であった。
 それが二度にわたる石油危機のため、大きく軌道修正され、前述のごとく五九年操業停止に至ったのである。六二年四月現在、この臨海地で稼動しているのは、三号地で合理化をすすめている住友重機械と四号地の四国電力壬生川変電所のみで、火力発電所の灯は消え、住友アルミの建屋の撤去が進められている。

 住友重機械工業の立地

 明治四年(一八七一)に設立された住友機械工業は、当初は別子銅山で使用する鉱山機械の製作、修理から始まり工業の進展によって新居浜製造所として拡大発展し、合併などもあって総合重機械メーカーに成長した。同社は四二年に完成した東予市の三号埋め立て地(五六万平方m)に進出、四八年に東予工場として稼動した(写2―20)。同工場は大型構造物の最新鋭専門工場をめざしたもので、原子力及び一般用圧力容器と、本州四国連絡橋建設計画に伴う大型橋梁部門の需要増に備えての立地で、これ以外に海底油田開発用の海洋構造物や宇宙関連設備など未来志向の工場として地元の期待は大きかった。しかし、重厚長大型の構造的体質は石油危機となって改める必要が生じ、六一年一月に合理化計画が発表された。その結果、六一年当初五六〇名いた従業員は六二年四月現在二四〇名と大幅に減少した。これに伴い協力工場群の中には、親会社の東予市への進出に併わせて進出した東予市の工場を閉鎖する企業が出たり、丹原町の鋳物工業団地の関連企業も、受注減やコスト削減要求に苦しむ企業が多い。

 鋳物団地と機械部品

 表2―24の工業統計から丹原町の工業出荷額をみると、五〇年の約五五億円か六〇年には一三七億円となっており、機械と鉄鋼で六〇%以上を占めている。その中心は愛媛鋳物工業団地と㈱寺町鉄工所である。四九年には県内の銑鉄鋳物製造業一一社と機械加工業一社の計一二社で組合を設立し、公害防止を図る中で協業化によるメリットの追求で、経営基盤の確立と生産性の向上をめざして団地を建設し、五〇年に操業を開始した。
 県内銑鉄鋳物製造業は一九事業所(五八年工業統計)であるが、その内一一社が丹原町の鋳物工業団地に集中立地していることになる。団地組合員の生産の推移をみたのが表2―25である。五四年から五五年に高水準に達したが、現在低迷を続けている。表2―26のごとく一社が廃業したため、現在一一社で、全従業員二四五名となっている。
 団地は中山川の河川敷を利用し、従来の主取引先の住友重機械・井関農機へは国道一一号へ直結する好位置を生かして結ばれていた。しかし、現在は県内需要は三〇%に低下しており、代わってコマツ・ヤンマー・栗本鉄工・川崎重工などの京阪神市場やマツダなどの広島が中心になり、東予港に近い利点を生かす努力をしているが、構造不況による受注低迷から脱出しきっていない現状である。
 一方、もう一つの丹原町の中心的企業は㈱寺町鉄工所である(写真2―21)。同社は昭和八年に大阪市西区で小ネジ類の製造を始め、その後大阪本社工場が戦災で焼失したこともあって、丹原町に建設していた工場に本社を移しネジ類の製造を再開した。地方への立地の輸送コストの克服のため付加価値の高い高精度部品の製造に進出し、次第に鍛造、熱処理、切削、研磨の一貫生産体制を整え、国内でも有数の高精密ネジ、金属熱処理のメーカーに成長した。現在、従業員二二〇名で工業出荷額約三〇億円であるが、五年前からは高精度のコンピュータ部品の生産をはじめている。道前平野の一角から世界に通用する高精度部品が送り出されているのである。

図2-19 東予市臨海工業地の略図

図2-19 東予市臨海工業地の略図


表2-24 丹原町の工業生産の推移

表2-24 丹原町の工業生産の推移


表2-25 愛媛銑鉄鋳物工業団地の生産推移

表2-25 愛媛銑鉄鋳物工業団地の生産推移


表2-26 愛媛鋳物工業団地企業一覧

表2-26 愛媛鋳物工業団地企業一覧