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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

1 集落の特質

 集落の区分

 人間は農林業や商工業などの生業にたずさわり、生活の糧を得るとともに、村落や都市を生活の場所としている。人間の生活舞台である村落や都市を広義には集落とよぶが、今日では都市に対して、農山漁村を集落とよぶことが一般的となっている。
 集落は、住民がその主たる生業を何に求めているかによって区分するとすれば、大まかに農村・山村・漁村とよぶことができる。農村は平地に立地し、住民の多くが農業に従事している集落、山村は山地に立地し、住民が山地固有の生業に従事している集落、漁村は臨海に立地し、住民が漁業に従事している集落であると概念規定することはできるが、都市化の著しい今日、個々の集落をはっきりと区別することは必ずしも容易ではない。

 集落の特質

 現在の集落は、大字とか部落、あるいは組などと地方によってその呼称は異なるが、市町村を構成する基礎的な生活単位であり、独自の社会組織を持っている。藩政時代には独立した行政村であったものが多く、農業水利や入会採草地を管理することによって、住民の生活を律してきた。住民は水や山を共通の物的基盤として、生産活動や日常生活で互いに助け合って生活してきた。このような村落の特質を村落共同体とよぶ。明治二二年(一八八九)の町村制の実施によって、藩政時代の村は新しい行政村を構成する集落となり、大字とか部落とよぱれるようになった。生活領域の拡大や産業の発達につれて、集落の住民の意識も変革し、村落共同体的な性格はしだいに薄れてきているが、なお農山漁村には、多少なりとも共同体的な性格が残っていて、これが地域の住民の意識や行動を律している面が多い。