データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

2 真珠と水産加工品の販路

 真珠の入札会
       
 真珠の入札会は昭和三五年一〇月、本県では初めて松山市において、愛媛県の後援により、県真珠養殖漁業協同組合と全国真珠養殖漁業協同組合との共催で実施された。県漁連主催の入札会は昭和三八年から行われることになった。当初行われた漁連の入札会には、上揚された真珠が二・四貫目で買手は五人であったといわれる。現在の入札会では数百貫の真珠が上揚され、多くの業者(指定商社四○、昭和五四年一一月現在)が詰めかけて活気あふれる入札会場となっている。今日では、毎年一一月に行われる第一回の入札会で、その年の全国の真珠価格の予想が出来るとまでいわれており、宇和海真珠の躍進ぶりには目をみはる
ものがある。指定商社の内訳をみると神戸二六、三重県一一、東京三となっている。
 愛媛県における真珠浜揚げ量に占める系統別比率は、県漁連傘下の単協組合が約五〇%、全真珠傘下の業種別漁協組合約三〇%、事業者協会員約二〇%と推定されている。浜揚げ量に占める漁連系統の比率が高いのは、沿岸漁業者から真珠養殖への転換者が多いためである。
 浜揚げされた真珠は一部の加工不要なもの(ハナ珠)を除き、大部分が加工業者により加工され、外人バイヤーを通じ、あるいは直接に輸出される。県内の加工業者は一五業者ほどあるが、販売面で問題もあり、振わなかった。ただ最近、南レク事業の進展に伴い、本県真珠を観光名産として売り出そうという気運が高まっており、県は生産・加工・販売の一貫体制づくりを進めようとしている。

 水産加工品の販路
 
 伊予市の削りぶし(花かつお)の原料はイワシ・サバ・カツオ・メジカ・脱脂サンマなどで、原料の主要仕入先は宇和海をはじめ高知・宮崎・鹿児島・千葉・宮城が多い。販路は三社が三分し、ヤマニは京都を中心の関西、ヤマキは東京中心の関東、マルトモは関東以北をそれぞれ有力市場としており、全国の三〇%以上を占めていた。また、松前町を中心とする小魚珍味は、東京、大阪、広島などを主な出荷先としている。古くは儀助煮と呼び、北海道の岩見沢や宮城県の仙台などを根拠地として売り歩いていた。
 八幡浜や宇和島で生産されるかまぼこは、準生鮮品で日持ちが悪いので、メーカーと末端消費者との距離は短くなければならない。したがって、その流通形態は生菓子などのように製造小売の形を採るか、メーカーが小売店へ直接卸す方法を基本としており、このような方式が現在でも主流を占めている。松山市内有名デパートや国鉄松山駅、松山空港売店などでも愛媛の名産として販売されている。保存のきく削りかまぼこは贈答用として県外に送られ好評を博している。