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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

2 木材の流通と加工

 木材の流通

 愛媛県は製材加工業の盛んな県である。昭和五五年に二一五万立法メートルの原木が製材工場・合板製造工場・チップ製造工場で加工処理されている。このうち製品として流通したものは一〇一万立法メートルで、このうち県内出荷が五六%、県外出荷が三六%となっている。県内には伊予三島市・川之江市などに製紙工場があり、パルプ用材として消費される原木も多いが、原木の大部分は県内の製材工場で加工され、うち半分近くが県外向けで、住宅建築用の製品の出荷県となっている。
 県内で生産される素材は八〇万立法メートルで、それは県内需用の三八%にすぎず、不足分は移入材と外材で補給されている。五五年現在では移入材三四万立法メートル(一六%)、外材一〇〇万立法メートル(四七%)となっている。同年の全国の外材依存率が五六%であるから、愛媛県は全国的には国産材の依存率が高い県である。なお本県に外材の移入が本格化したのは、三六年からで、四〇年に一四%であった外材比率は四四年には三九%となり、以後四〇%程度を上下している(図4―29)。
     
 原木市場

 愛媛県産の素材と他県からの移入素材は素材生産業者や森林組合の手によって原木市場に集められて、そこから製材工場などに市売されるものと、原木市場を経ずに直接製材工場やチップ製造工場などに出荷されるものがある。県内の原木市場は五五年現在、連合会系統が九市場、業界系統が七市場あるが、その拠点は伊予三島市・西条市・今治市・松山市・久万町・小田町・大洲市・宇和町・宇和島市・広見町・津島町などである。これらの原木市場は、その背後の山村を素材の集荷圏としている。
 一方、外材は商社の手によって松山市・今治市・新居浜市の外材輸入港に陸揚げされ、その港に隣接して立地する木材工業団地内の製材工場で加工処理される。なおそのほかにも、陸上輸送や海上輸送によって県内各地の外材工場や外材・国産材併用工場へも輸送され、加工処理されるものがある。

 製材工場と素材集荷圏

 県産材や外材を加工処理する製材工場は県内各地に立地しているが、特に製材工場の多いところは、伊予三島市・新居浜市・今治市・松山市・伊予市・久万町・大洲市・八幡浜市・宇和島市などであって、このうち、新居浜市・今治市・松山市には外材を加工処理する製材工場が集中した木材団地がある。
 伊予三島市の製材工場は、加茂川流域・銅山川流域、さらには隣接の高知県や徳島県の山村を素材の集荷圏としている。ここは外材・国産材の併用工場もあるが、主として国産材を建築用材に加工し、京阪神地方に出荷するものが多い。新居浜市と今治市には外材工場が多く、国産材の製材は少ない(図4―30)。
 松山市は新興の製材工業地で、外材輸入港に隣接した垣生の木材団地における外材加工に特色がある。国産材の素材は上浮穴郡を主な集荷圏とし、製品は地元市場と結合して家具材の生産が五%あり注目される。伊予市の郡中は明治以降からの久万地方の木材の集散地であって、中予地域最大の製材工場の集中地区である。松山市に外材工場が多いのに対して、国産材工場が多く、上浮穴郡から集荷した杉材を柱材に加工して、京阪神地方に出荷するものが多い。久万町はもっぱら地元の素材を加工する製材工場で、外材工場はみられない。
 大洲市の製材工場は外材と国産材の加工処理が相半ばしているが、国産材は主に肱川流域の素材を集荷する。製品は建築用材の比重が低く、木箱・仕組板・梱包用材などが多いのが特色で、これは肱川流域の松材の加工と関連する。長浜町は肱川による筏流しが廃止されて後、木材集散地としての機能を失い、製材工場では素材取扱量の八〇%が外材となっている。
 八幡浜と宇和島市の製材工場は素材を国産材に依存する割合が高い。八幡浜市の製材工場は宇和盆地のひのき材などの加工と結びついて大正年間に立地したが、その発展は第二次大戦後である。製品では、ひのきの通し柱(六mの長さ)が有名であるが、その素材は県内外の国有林の大径木によったものが多い。つまり宮崎県や大分県などの国有林から素材を移入し、製品を京阪神市場に出荷するがそれは、八幡浜市の港湾機能と海上交通の便に負うところが大きい。宇和島市は明治・大正年間からの木材の集散地である。製材工場は南北宇和郡の民有林の素材を集荷するのみならず、地元宇和島営林署管内と高知県幡多郡の国有林材を集荷する。製品では、割柱・木箱・仕組板・梱包用材の生産が多いのが特色である。一本の原木を四つに割って柱材とする割柱は国有林の大径木を素材とし、木箱は南予地域に多い松材を用いている。割柱は気候温暖な九州、木箱は京阪神への出荷が多い。
 県内各地の製材工場で生産された製品は、県内消費と県外出荷とがある。愛媛県は県外出荷の多いことに特色がある。その出荷先は、五五年では大阪府が四〇・〇%、ついで兵庫県が一九・三%、東京都九・三%、広島県六・三%、香川県五・〇%などとなっていて阪神への出荷率が高い。

図4-29 愛媛県の木材の流通と加工(昭和55年)

図4-29 愛媛県の木材の流通と加工(昭和55年)


図4-30 愛媛県の木材の集荷圏と加工流通拠点(昭和57年)

図4-30 愛媛県の木材の集荷圏と加工流通拠点(昭和57年)