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愛媛県史 地誌Ⅰ(総論)(昭和58年3月31日発行)

四 愛媛の四季

 日本列島はユーラシア大陸東岸にあり、大陸東岸の温帯季節風気候のもとに、冬は北西季節風、夏は南東季節風と明瞭な卓越風の交替があり、その交替期には梅雨・秋雨の長雨があり。このように寒暑の差が大きく、季節変化に富みかつ海岸・盆地・山岳と地形が複雑なので、気候は小規模で多様である。ここでは愛媛の季節の推移とそれにともなうさまざまな天気現象について概観する。 
 徒然草に「四季の移り変わりも、春は暮れて後、夏になり、夏果てて、秋の来るにはあらず、春はやがて夏の気を催し、夏より既に秋は通ひ、秋は即ち寒くなり、十月は小春の天気、草も青くなり、梅も蓄みぬ。木の葉落つるも、先ず落ちて芽ぐむにあらず、下より萌しつはるに堪へずして落つるなり」。(徒然草第一五五段)とある。ここでの十月は陰暦のそれで、冬の初めを意味する。こうした文章の中にも中世のするどいまだすぐれた季節観をうかがい知ることができる。
 激しく変化に富んだ季節に対する日本人の関心は強い。古くからある桜の花見、梅見、雪見、桃の節句、菖蒲湯、螢狩り、月見など四季折々の季節の楽しみがあり、ころもがえ、夏と冬の敷物、すだれ、うちわなども季節の風物である。俳句の歳時記にもそれぞれ日本人の四季観がでている。
季節には太陽の運行から区分した古くから東洋に伝わる光の季節と、気圧配置つまり気温・降水量などの変化から区分した近代気候学の方法による西洋の季節がある。前者は二四節気に代表され、後者では天気図から区分した季節があり、両者を比較しながら検討してみよう。