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わがふるさとと愛媛学Ⅶ ~平成11年度 愛媛学セミナー集録~

◇『弓削民俗誌』作成の副産物

 『弓削民俗誌』の作成をとおして、初めには計画していなかったいろいろなことが起こりましたので、その幾つかを紹介します。
 まず、先ほども少しお話ししましたが、聞き取り調査の間に、お年寄りの方々から自宅に残されていた古い道具や写真などをたくさん頂いたり預かったりしました。そこで、これらを集めて「ふるさと民具展」として展示しました。展示品の数は、約400点に上りました。多くの皆さんに見に来ていただき、大変好評でした。特に年配の方々は、古い町並みなどの写真を懐かしさ一杯という感じで見ておられました。あるいは、展示されている写真に自分が写っているということで、とても喜んでおられたのも印象的でした。
 それと、町内の土生(はぶ)地区で聞き取り調査をしておりました時に、あるお年寄りが熱い思いを聞かせてくれたのをきっかけに、昨年、30数年ぶりに復活した行事があります。
 江戸時代中期に土生を中心とした義民騒動が起こり、組頭(くみがしら)の庄右衛門が農民と一緒に騒動を起こしました。本当のところの原因はいまだにはっきりしていませんが、租税の減免であろうと言われています。土生では新盆を迎える家で、新仏の供養と庄右衛門をしのんで「庄右衛門踊り」を行っていました。この廃れていた行事が復活されました。この踊りには「口説き」と「太鼓のおはやし」が入るのですが、こういった披露の場を失っていたお年寄りが特に喜んでおられました。