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わがふるさとと愛媛学Ⅴ ~平成9年度 愛媛学セミナー集録~

◇海中散歩

写真1
 沖へ泳いでいくと、海の底が、少しずつ見えなくなってきて、やがて真っ黒になります。あの時は、真下に何か不気味なものがおりそうで、非常に怖いですよね。魚の群れがそういう時にバッと体の横を通りすぎることがあります。キラキラッと、まるでダイヤモンドみたいな群れがバーッと行きます。これは何かと言うと、アジです。

写真2
 真っ黒な闇の中を落ちるように、10m、20mと潜りますと、いきなり明るくなります。パッとこういう景色が広がった時は、これはもう、驚き以外のなにものでもありません。原色のいろんなものが、すべて目に飛び込んできます。竜宮城の物語は、昔このような珊瑚礁(さんごしょう)を見た人が、作ったに違いありません。これはエンタクミドリムシ、俗に言うテーブルサンゴですね。大きいものだったら、直径が2、3mになります。これは横にも広がるし、それから、海の中は谷もあれば岩場もありますので、そういうところには、これが層をなしていますから、まるで都会の高層ビルのような、複雑な3次元の景観になっています。

写真3
 これはハコフグです。堅い箱のような形をしたところに、このヒレでヒラヒラと泳いでいる。これもよく目につきます。

写真4
 このたくさんの魚は、エンゼルフィッシュのように見えますが、ツノダシです。後ろのほうにも、いろんな魚がおります。このような熱帯魚が群れて、定住しております。

写真5
 海底も、違う場所に行くと、このように景色が変わってきます。この赤や黄色の、木みたいなものは一体何だろうかということで、近づいてアップで写してみたのが、次の写真です。

写真6
 それは、ヤギ類です。これも一応サンゴです。サンゴというのは、石灰質の堅い骨格がありまして、その中に、サンゴ虫という、体が柔らかくイソギンチャクのような生物が群体で棲(す)んでいるものです。女性の方でサンゴのネックレスなどをお持ちの方、おられますか。真紅のがありますね。これで作られています。

写真7
 またちょっと違う場所に来ますと、このように、野菜のブロッコリーみたいな真っ赤なものが目をひきます。これはウミトサカと言います。先っぽは、ウミトサカのトサカですから、鶏頭のような形で、赤色やダイダイ色がついています。ぴったりの名前ですね。これは、高さが50cmくらいになります。触ってみると柔らかいです。

写真8
 これは、岩にまるで宝石をパッと投げて散らばらせたような感じです。これはイバラカンザシです。石灰質でできた管がありまして、そこからパーッとパラソルを開いたような形で、色は、赤、黄色、青、紫、白と多種です。直径は3cmくらいで、岩を覆っています。

写真9
 次に、砂地に目を向けてみましょう。これはスナイソギンチャクと言って、本体が砂の中に入り込んでいます。このように開いているわけですが、これは大きいです。直径が20cm以上あります。この触手で魚を捉えて、中の胃袋で消化し、いらないものを吐き出します。

写真10
 これも美しいですね。ミノカサゴと言って、よくサンゴの近くに生息している魚です。まるでシマウマのような、素晴らしいシマ模様。そして胸びれが、このように変形していて、優雅に泳いでいます。ただし、背びれなどのとげのところに毒がありますので、捕まえたりするのはやめたほうがいいです。

写真11
 ちょっと見にくいですが、イカが魚を捕らえたところです。いろんな生物が、食う、食われるの関係の中で、複雑な生態系を形成しています。

写真12
 ところで、食う、食われるの関係ではなく、お互いに持ちつ持たれつ、共生という関係もあります。これは珊瑚礁で最も一般的なサンゴイソギンチャクです。これが何m²にもわたって、じゅうたんを敷きつめたようになっています。そして、そこには必ず、このクマノミという魚が共生しております。実は、このサンゴイソギンチャクには毒がありまして、魚が忌み嫌う。しかしクマノミは、その毒には耐性を持っています。ですから、クマノミは外敵に襲われると、すぐにこのイソギンチャクの中に潜り込んで、難を逃れる。その代わり、この魚が何か食べ物を消化しますと、その糞(ふん)が、このイソギンチャクの栄養になるというわけです。

写真13
 これもサンゴイソギンチャクですが、中にいるのはオトヒメエビです。小さな、3、4cmのエビで真紅の赤と白のコントラストが本当にきれいです。これらも共生生活をしています。
 先程、自分の世界観が変わったと言いました。どう変わったかと言いますと、陸上での生活しか知らず、海中に何があるのか思いも及ばなかった、それが、真っ暗な中に、実はこんなすばらしい世界があることが分かったということです。人間は小さいなあと思いました。陸上で人間たちが、ああだこうだといろんなことを言っている間に、この海中では小さな宇宙が、脈々と何億年も生き続けてきたわけでしょう。そして、すばらしい生態系を作っている。この小宇宙が、私に「偏見でものを見たらいけないな。」とか、「すばらしい世界が、自分の知らないところに、まだまだあるのかもしれない。という気持ちを起こさせました。