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わがふるさとと愛媛学Ⅴ ~平成9年度 愛媛学セミナー集録~

◇わたしの見たタイ

 タイは今、森林の減少が年々深刻化しており、その対策に悩まされています。実際に現地へ行ってみても、木がたくさん生えている所もあるのですが、木が少ない所は本当にポツポツとしか生えていなくて、カラカラの大地が広がっていました。その昔、タイは海だったので、地下には深い岩塩層があり、10mも掘ると塩が出るので、ため池も井戸も深く掘ることができず、つくってもすぐに乾いてしまいます。町のほうなら浄化装置をつくることもできますが、田舎では生活用水だけでなく、稲作などに必要な農業用水を得ることすらままならないところもあるのです。
 僕のホームステイした家には水道がなく、僕の身長の1.5倍もある壺(つぼ)のようなものに雨水を溜(た)めて、その水を使って洗濯をしたり、食器を洗ったりしており、料理に使う水は、全て市販されているミネラルウォーターを使っていました。一度、冷蔵庫の中を見る機会があったのですが、その中にはたくさんの水入りボトルの他に、牛乳やコーラなどの飲み物が多く入っていました。
 タイの町は発展している所と、まだあまり開発が進んでいない所の差が激しく、驚かされました。特にバンコクは、日本の都市と比べてみても、勝るとも劣らないくらい発展していて、人や車の通りが多くにぎやかな町でした。しかし、俗に東北タイと言われる地方では、家を探すことも大変なぐらい人口が少なく、そこに住む人たちのほとんどが農業を営んでおり、生活はあまり楽ではないそうです。
 タイでは昔、ハーナーディー・チャップチョーン(良い土地を探し、耕した土地は自分の物)という制度がありました。ほんの20年ぐらい前の話です。しかし、そのせいで森林がたくさんなくなってしまい、1989年に森林伐採禁止令が出されました。この法律により、今では自分が植えた木以外は切ってはいけないそうです。
 タイにはワットと呼ばれる寺が数多く建てられていて、毎朝6時ころと昼12時になると、一般の人々は自分たちが食べる前に、その寺に御飯を持って行って、坊さんにお供えします。坊さんは、そのお供えされる御飯で生活しています。坊さんは、他の人よりも位が高いのです。坊さんが食べ終わるのを待って、一般の人々は食べ残った御飯を持ち帰り、自分たちが食べるというのが日課だそうです。
 タイでは人口の95%が仏教徒だそうで、男の人は一生に一度は坊さんになるという義務があるそうです。坊さんの中でも一番長く寺に滞在している人が一番位が高いというので、8歳にも満たないような子供に坊さんの姿をさせて歩いている人も見かけました。
 タイは食べ物の面でも特徴があります。タイでは主に辛い食べ物が多く、調味料もたくさんありました。トムヤムクンや、タイスキなどは、日本でもよく知られていると思います。けれど、タイの食べ物は辛い物ばかりではありません。鶏肉を甘めの味付けで調理したもので、日本の焼鳥のようなものもありましたし、何よりも牛乳がすごく甘かったことをよく覚えています。夕イで飲む牛乳、ココア、コーラなどの飲み物は、全て日本のものより甘めにつくられていて、「タイの人の味覚って、不思議だな。」という印象を受けました。また、タイは一年中暖かい気候なので、日本では珍しい果物もたくさんありました。例えば、ドリアン、マンゴスチンなど、よく聞く名前のものや、ラムヤイという、タイではごく一般的に食べられているというものまで、7、8種類ぐらいはありました。中でも、ドリアンは、自分が小さい時からちょっとした思い入れがあり、どんなものかと思っていたのですが、食べてみると、まるで悪夢を見ているような感覚に陥ってしまいました。けれども、これもいい体験になったと思います。