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わがふるさとと愛媛学Ⅴ ~平成9年度 愛媛学セミナー集録~

◇小田町にある愛媛県指定天然記念物の巨樹

 最初に小田町にある愛媛県指定の天然記念物の巨樹を四つ説明しようと思います。
 一つ目は、中川(なかがわ)の三島神社にあります乳出の大イチョウです。これは五つの幹に分かれており、子供が手をつないでグルッと回ってもらうと、10人ぐらいは手をつながないと、周りを取り囲めないというような大きさです。樹高は、45mでして、愛媛県一を誇っているというふうに思っております。この木の樹齢は、和銅5年(712年)に三島神社が建てられておりますから、恐らく逆算して、1,285年という年月を重ねておるのではないかなと推定しております。
 二つ目は、本川宮原(ほんかわみやばら)の広瀬(ひろせ)神社にありますイチイガシの大木です。同じイチイガシを東から眺めると、子供が20人ぐらい入れるような洞窟(くつ)になっております。この木の樹齢は、1,000年以上の年月を重ねていると推定しております。
 三つ目は、同じく広瀬神社にあるケヤキの大木です。鳥居の横と境内の奥に2株あります。この2本のケヤキも、やはり寄る年波に勝てないということで、大変大わずらいをしておりまして、本川の宮総代さんや地域の方々が、800万円以上のお金をかけられて治療をしました。どういうことをしたかというと、境内の奥のケヤキには、根元のところを十分耕したり、枝の枯死した部分を全部切り落とし、その傷口を火炎放射器で焼いたり、根の勢いを良くするための処置もしたようです。
 また、鳥居の近くのケヤキも、下の部分に、先程牧野先生のお話にもありましたように酸性雨が根にかかって、根の部分が相当傷んでいるのです。そして、だいたい8mぐらいの高さまで空洞になっているのですが、今の技術では、その空洞をふさぐ手だてはないというので、その空洞を埋めるのに炭やバラスを入れて、それから空気の出入りを良くするということで煙突を立てました。とにかく、この地域に住んでいる方々が、本当に木を大事にするという心を持っておられるということを、私は感じました。
 最後四つ目は、上川(かみがわ)にあります「世善(よぜん)桜」です。かわいそうな形になっていますが、ヒガンザクラの一種です。地域の人々が、この世の中が良くなるようにということで名づけたのです。また、別名「世直し桜」とも呼ばれ、下のほうに花がたくさんつけば、田んぼの稲がよくできるし、上のほうへ花がよくつけば、畑の作物がよくできると、その年の作物の出来具合を占っていました。地域の方々は、それを信じて、サクラを大切に見守ってきました。この木の樹齢は、514年と推定しております。
 これら愛媛県指定の天然記念物の巨樹は、旧参川(さんがわ)地区に全部集中しておりますが、ぜひ見ていただきたいし、生育の様子やこれらを守ってきた人々の気持ちなども考えていただきたいなというふうに思うわけです。