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わがふるさとと愛媛学Ⅴ ~平成9年度 愛媛学セミナー集録~

◇愛媛学の趣旨

石川
 御紹介いただきました石川です。
 ただいまから、愛媛学セミナー「巨樹が育(はぐく)むふるさと・小田」を始めさせていただきます。どうかよろしくお願い申し上げます。
 小田町とは、今から20数年前、雨霧(あまぎり)山にある鍾(しょう)乳洞の第1回の調査があって以来、昆虫や野鳥を調べに小田深山(おだみやま)を訪ねるようになり、親しくさせていただいています。
 このセミナーに牧野先生をお迎えできましたことは、本当に幸運なことで、私も、この日を楽しみに待っておりました一人です。先程の御紹介にもありましたように、牧野先生は非常に多くの書物を著わしておられ、我が国の巨樹の第一人者です。
 さて、今日の催しに「愛媛学」とありますが、「学」という字がつきますと、何か堅苦しさを感じるのですけれども、お手元の資料にありますように、本当は音楽の「楽」、つまり楽しいほうの楽というふうに、御認識いただければと思います。学ぶということは、試験さえなければ、本当に楽しいことです。それは創造性へと発展していくものだからです。
 セミナー(seminar)というのは、英語では研究会ですけれども、語源を探りますと、ラテン語のセミナリウム(seminarium)からきております。セミナリウムというのは、苗床とか、保育所という意味があります。さらに、その語源は、ゼーメン(semen)で、生物の種という意味です。つまりセミナーというのは、一言で申し上げますと、植物や動物を育てる土壌などの環境ということになります。今日のセミナーによって、私たちの心にまかれた種が、いろんな刺激を受けて成長していくならば、これは楽しいことに尽きると思います。
 今日のセミナーは、サブタイトルに、「わがふるさとと愛媛学」とありますように、ふるさとを再発見してみようというわけですが、ふるさと発見の手法としましては、三つ考えられます。
 まず一つ目は、自分の足でふるさとを、隅から隅まで歩いて、注意深く観察してみる。そして興味を持った自然とか、歴史文化、そういうものについて、書物をひもといて、自分なりに調べてみるということです。
 二つ目は、ふるさとから外に出て、振り返って、ふるさとを見てみる。例えば外国に行きますと、カルチャーショックを体験すると思いますが、それと同時に、自分のふるさと、自分の国、自分自身についても客観的に眺めることができると思います。
 三つ目は、外からいろんな方々をお招きして、現地をよく見ていただいて、違った観点からお話を伺う。要約するとこの三つになるような気がします。
 今日は国際協力でタイに行ってきた小田中3年の上岡君の話も楽しみにしています。
 外に出ますとそこが遠ければ遠いほど、ふるさとに帰ってから、ものを見る視点が変わってくるということを、私自身も経験しております。
 小田の町は空気も水もおいしい自然に恵まれた非常に素晴らしいところですが、今日は、この小田の町の素晴らしさを、再発見していただければ、そして小田発の何かが見えてくれば、このセミナーが開かれた意義があると思います。
 それでは、全国巨樹巨木林の会理事である牧野先生のお話を伺いたいと思います。先生、どうぞよろしくお願いします。