データベース『えひめの記憶』
わがふるさとと愛媛学 ~平成5年度 愛媛学セミナー集録~
4 これからの桜井漆器について
今、桜井に限らず漆器というのは、この会場にいる年代の方がお得意さん層で、若い人はあまり興味がない。桜井漆器を存続させるためには、若い人にアピールのできる商品、県外に通用する商品を、今から開発することが、大きな課題である。
形を変えることは、我々の業界ではなかなか難しい。漆器のデザインは、花鳥山水が一つの基本であり、今までの古い習慣から、新しいデザインには苦慮している。それで、色やデザインで若い人にアピールでき、勝負できるようなものを開発するよう、いつも言っている。「こういうデザインはどうだろうか。」ということで、若い人の意見を聞きながら商品開発をしているが、若い人にアピールできる商品作りに、苦労している。去年、入社して以来何点かデザインをした人のは、非常によく売れている。また、まったくの異業種の方が桜井漆器を作りたいということで、まだ技術は身についていないが、デザインはもう十分通用するものを作っている。まだ入って10か月ぐらいだが、非常に斬新でいいデザインで、これまでの十何点は、お客さんからも非常に好評をいただいている。
次に、製造卸の復活。今現在、桜井漆器というのは製造小売、昔の製造卸の面影はもう全くない。製造小売では、職人さんを作っても同時に養っていくのがなかなか大変である。安定度から言えば、やはり昔のように「漆器を製造して、その商品が多方面に動いていく。」製造卸でないと、桜井漆器の復活ということはなかなか難しい。
「桜井漆器業界は後継者難で、徒弟養成が課題である。」と言っているが、今ある10軒足らずの所で、次の人に後継者として桜井漆器を勉強させようという所は、あまりない。私とこは、30歳前の比較的若い従業員がたくさんおり、高校1年生の息子には後継者として勉強さそうと思っているし、また本人もその気でいる。従って、本当は、私よりも桜井漆器の組合長にこの場に出てもらうのが、一番の筋ではないかと思ったが、次の世代に託すこれからの桜井漆器という話をすれば、私が出てきた意味合いは理解していただけると思い、この場に出る決心をした。
これからの桜井漆器は、従来通り生活食器を中心に物を作っていたのでは難しいし、息子に跡を継がす以上、非常に不安である。私以上に他の業者の方も不安だろうし、安全な道を歩ませても不思議ではないと思う。現在の生活様式は、昔から著しく変わっており、その中で何かほかに桜井漆器にできるものはないか、いろんなことを考えてみた。
まず、建築関係の物を作ったらどうかと思いいろいろ試みたが、なかなか難しい。実は、桜井漆器には木地屋さんがいないため、東北や北陸から買っているが、こういう物を作りたいと思っても、見本を作るのが大変であった。また、建築関係の物は、素人の私どもが考えても、サイズとかいろいろなことが、全く分からない。そんなことでいつも行き詰まり、もう一つ伸び悩んでいる。この建築関係のことは、伸び悩んでいるので、こうして公表できるが、もう一つ考えていることは、「実現できるんではないかなあ、新しい流れの桜井漆器になるのではないかな。」と、私自身期待もしている。平成10年には橋が開通し、今治の町にも観光客がかなり来るのではないか。その観光客に対するアピール、どういう物ができてるか。近いうちに、「ああ、あの時の話は、これやったんか。」と思うようなものを作るので、その時にはまた、御利用をお願いします!。
そして最後にやはり、「皆さん方に桜井漆器を御愛顧いただかなければ、桜井漆器の存続は難しいと思いますので、何かの時には桜井漆器を、まだ10軒足らず頑張っておりますので、御利用してくださいませ。」