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宇和海と生活文化(平成4年度)

(3)人々の気質

 自然環境に起因する暮らしの違いという視点から、ウワテとシタテの典型的な生活の概略を述べたが、「ウワテとシタテの人々の気質の違い」というものは、聞き取り調査をとおしてなんとなく感じながらも、漠然としてつかめない。そこで、先述の**さんや、**さんに、ウワテとシタテに住む人々の気質について聞いてみた。
 お二人とも、瀬戸町内の学校に長く勤務した経歴を持っている。とくに**さんは、地元瀬戸町出身で、学生時代に町を離れた以外は「34年間の教職生活もすべてを瀬戸町で過ごした」という。
 子供たちの日常生活については、「手伝いは、全般的にシタテの子供のほうがよくしていたように思います。家庭でも、親の手伝いをして当たり前という教育がなされていたのではないでしょうか。」と、当時をふりかえった。卒業生の進路から見ても、大工、左官、菓子など職人として成功した人がシタテの生徒に多く見られたようで、粘り強い性格であると言える。ところが、気候の観点から見ると「岬半島は日本列島に例えると、冬の季節風が厳しいウワテは日本海側、夏から秋にかけて荒波が押し寄せるシタテは太平洋側の気候にそれぞれ似ていると言えます。この側面から見ると、ウワテは季節風に耐える生活によって粘り強い気質が育てられ、シタテでは明るい気質が育てられているような気がします。」ということになる。
 また、教師生活をふりかえってお二人とも、「みんな純真で、のびのびとした子供たちでした。それに赴任したどの集落でも、人情の厚さを感じました。何かあると、皆が力を合わせて支え合うという連帯感のようなものも強かったと思います。」と、口を揃えて語った。気質の違いは、集落によるというよりも個人差レベルの問題としかとらえることができなかったが、厳しい生活の中で育てられた忍耐強さと温かい人情は、ウワテ、シタテをとおして共通していると思われる。

 メロディーラインの開通にともなって、人の行き来も変わり、生活様式も以前とは大きく変化してきたが、いつまでもこの地域のよさを大切に守っていけるよう、若い人の定着できる町作りを心がけて欲しいと感じた。