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宇和海と生活文化(平成4年度)

第1節 自然とくらし

 この節では岬端の三崎町西部の串地区と湾奥の三瓶町を対象に、人びとが自然とどのように向き合ってくらしてきたかをみるため、特に水と風に焦点を当てて見ていくことにする。
 南予随一の乏水地域とされる三崎町西部のくらしは、生活用水の確保が予想を超えてはるかに厳しいものであり、したたかに、そして陽気にくらす人びとから自然とともに生きる姿を学ぼうとした。一方、水には恵まれていたとされる湾奥の三瓶のくらしは好対称ではあるが、水問題は絶えることがなく、南予水道用水の通水が開始されたあとも課題は多いようである。
 この地域はどちらも海に囲まれている。佐田岬半島では海に背を向けてくらした時代もあったというものの、ここでは海とともに生きる人びとが多い。黒潮の急流が岩礁を洗うこの地域は海の幸が豊かである。漁を生業とする串と三瓶の男は、たくましい生きざまの中から、人びとが自然とつき合いながら生きることをわたしたちに語りかける。
 台風銀座といわれる佐田岬半島の風は強く、岬端の人びとは厳しい自然の試練に打ち勝って生きてきた。風波に耐えるくらしの中から見事な石垣の文化も生まれた。避けようのない自然の営みの中で、人びとは、あるときはじっと息をひそめて神に祈りながら、あるときは超人的な粘りをみせて生きつづけている。