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愛媛学のすすめ

おわりに

 横浜では1990年から毎年、行政の支援による市民のための「横浜学シンポジウム」が開催されていますので、簡単にふれておきます。主催は横浜学連絡会議(原克己会長)、共催は横浜市です。連絡会議の主な事業は、「横浜学シンポジウム」(年1回)や「公開講座」の開催、『横浜学だより』の発行などです。私も連絡会議の委員(幹事)の一人です。
 「第1回横浜学シンポジウム」を取材した川淵吉男氏は、91年2月18日付の『日本経済新聞』(関西版)で、次のようなことを述べています。
 「地域学はもとより行政の道具ではない。行政と住民との健全な緊張関係を保つことを期待して、行政が支援するのが望ましい。」
 有識者や行政関係者が大所高所から横浜学について論じあうこと自体は、私はよいことだと思っています。しかし、市民のいない無味乾燥な都市論に終始したり、あるいは、特別な目的のために利用したりすることだけは避けなければいけないといつも考えています。
 現代の都市学や地域学は、「町おこし」や「村おこし」の道具というより、町や村のなかで自分を再発見し、その町や村と上手につきあっていくための「自分おこし」のツールなのです。前にも書きましたように、横浜学だけでなく、全国の都市学や地域学の重要なキーワードは「多様性」ということです。
 どんな時代になろうと都市(町・村)の財産はそこに住む人たちなのです。まずは一人ひとりが等身大の都市(町・村)論を自分の言葉で語りはじめる、ここからすべての地名を冠した○○学がはじまります。ボーダレス(無国境)の現代はまさにそんな時機にあたるのです。