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えひめ、人とモノの流れ(平成19年度)

(1)協議会の設立

 ア グリーンツーリズムとの出会い

 **さんは伯方町の生活研究グループ「有津(あろうず)婦人同志会」の一員として、これまでさまざまな取組をされた経験を持たれている。**さんにGTにかかわるきっかけを聞いた。
 「私自身のGTとのかかわりは、平成5年(1993年)からです。食アメニティ・コンテスト(*13)に『瀬戸(せと)の香(かおり)』という名前で、ワカメの芯(しん)の佃煮(つくだに)、イギス(*14)の味噌(みそ)漬け、ヒジキの佃煮、福神漬けなどを出品して私たちの活動を発表したところ、農林水産大臣賞をいただきました。この受賞後、イギリスとドイツに行ったときに、当地のGTを体験したのです。イギリスやドイツでは20数年以上も前からGTの取組が進められていて、それが農家の副収入を増やしたりしていたのです。また、都市住民を長期滞在の形で受け入れていて、そこには独特のおおらかさがありました。特にイギリスでB&B(ベッドアンドブレックファースト)というベッドと朝食のみを提供する宿泊スタイルを体験したときに、これなら私でもできると思ったのです。
 帰国後すぐに東京でGTの講習を4日間受けました。講習から戻っては来たものの、こちらではほとんどGTは知られていませんでしたし、私一人がやろうとしても個人の力だけではどうにもならない状況でした。しかし、平成12年(2000年)になって県の農業改良普及センター伯方支所の後押しを受けて『しまなみGT推進協議会』が立ち上がることになり、協議会の会長に私が選ばれました。そうして本格的にかかわるようになったのです。」と話す。

 イ 協議会が立ち上がって

 **さんと**さんに協議会設立当時の活動の様子を聞くと、「私(**さん)は平成12年の協議会立ち上げのときから参加しました。伯方町にはいくつかの生活改善グループがあり、それぞれ様々な活動をしていましたが、現在は『ライフアップグループ』という一つの団体にまとまっています。その中に**さんが代表を務められている有津婦人同志会や私が代表をしているフラワーアレンジメントグループが含まれています。協議会ができるとGTについての研修会やシンポジウムが開催されるようになりました。当時私たちがかかわったものに『しまなみのいいところ探し(宝探し)』という活動がありました。具体的にどのようなことをやったのかといいますと、私たちの住むこの地域で、景色がよく、眺めのいいところなどのお勧めポイントを挙げて写真を撮影し、それを整理したり、また島の年中行事や郷土料理、そして特産品などを改めて一つ一つ取り上げてまとめていったのです。この作業はとても楽しかったですね。
 そして、農業改良普及センター伯方支所管内の生活研究グループ(*15)が、それぞれ一つずつ自分たちが提供できる体験メニューを考えることになりました。当初、私(**さん)たちのグループ(有津婦人同志会)からは炭焼き体験を出してみましたが、実際やってみると希望者が全く集まりませんでした。炭焼きは2日間かかりますし、観光客のみなさんは、バスでやってくると、1か所で2時間ぐらいしか滞在時間がありません。ましてや炭焼きなどは伯方でなくてもどこでもできるし、2日間もかかるのですから人が集まらなくて当然だったのです。そこで、だれにとっても興味・関心の高い『食べること』の体験メニューなら人を集めることができ、時間的な問題も解決できると考えました。私たちのところからはタコ釜飯、タイ飯、五目飯、釜飯づくりといった体験メニューを用意してみたところ、多くの方が希望されてうまくいきました。そうして、平成13年度には管内で100に及ぶ体験メニュー(ふるさとの味体験40、収穫体験46、暮らしの技体験10、島遊び体験4)が開発されたのです。
 そういった活動の成果をもとに、しまなみの魅力を満載した『しまなみグリーン・ツーリズムマップ』(初版)を作っていきました。マップ作りの中心も各地域の生活研究グループの皆さんでした。しまなみではその前身である生活改善グループの活動が盛んで、昭和30年代後半から活動されていた所もあり、経験を重ねたベテランの方が多くいらっしゃったので、若い人たちは引っ張られるような形で活動していったのです。」


*13:食アメニティコンテスト:農林水産省などが主催し、農山漁村の女性グループ・個人の中で、自主的な努力により地域
  の特産物を活用した起業活動などを通して地域づくりに貢献している優秀な活動事例について表彰を行うもの。
*14:イギス 6~9月にかけて瀬戸内海で採れる海藻で、形状は寒天の原料となるテングサに似ている。地元では岩場に打
  ち上げられたイギスを天日で干して長期保存している。瀬戸内地域で古くから食べられている郷土料理の一つに「イギス豆
  腐」がある。
*15:生活研究グループ 平成13年までは「生活改善グループ」と呼ばれた農村女性による生活改善を目指す実践集団のこ
  と。この集団での取組は昭和30年代から県下各地で始まっていた。