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えひめ、人とモノの流れ(平成19年度)

(3)町と大会にとっての活性化のために

 ア 生まれ変わった動きやすい組織

 「実行委員会の組織は10回大会を節目に大きく変わりました。それまでは実行委員長は教育長、担当は教育委員会、運営各部の責任者は行政の管理職、そしてその下に町の職員や民間のボランティアスタッフが置かれるという行政主導の組織でした。管理職が各部の長であれば、予算案や計画案などを昼間に役場の会議で決めることができますが、職員はいいとしても民間のスタッフにとっては自分たちの関与できないところで何でも決まって下りてくるわけですから面白くありません。
 しかし、これでは町にとって真の活性化にはならないと考え、10回大会からは各部の責任者に実際に現場で汗を流してもらっている民間団体の長の皆さんについてもらうようにしたのです。また、担当も教育委員会から、町づくり対策課に移しました。そうすると、これまでと違って夜間に打ち合わせ会を持たなければならないというような問題も起こりましたが、各部の民間の方々が責任を持ってしっかりとやってくださるので、結果として動きやすい組織に生まれ変わったのです。その際、民間からの初代実行委員長として**さんに白羽の矢が立ち、現在の**さんが3代目です。そして、10回大会以降は毎年大会が終わると、反省会を行って意見を出し合い、そういった意見を積み重ねながら12年間やってきたのです。ただ事務局だけは1回大会からずっと町の職員が担当しています。」

 イ 知恵を絞った節目の大会

 「これまで節目となる大会では、関係者が何か記念となるいいものを実施しようとアイディアを持ち寄って様々な企画を実施してきました。例えば、10回大会では選手の一人ひとりの顔写真と大会への意気込みを述べたメッセージを掲載した『大会記念パンフレット』を作成しました。選手の皆さんには、事前に写真や原稿の提出をお願いして作成しています。作ってみると、とても好評で当初は1回きりと考えていたものが毎年作成されるようになりました。また10回大会では、元プロ野球選手の西本聖さんをお招きしての記念講演や野球教室も開催しました。
 そして15回大会では、『リレー部門』の競技を設けました。リレーは、1チーム3名の選手が水泳、自転車、マラソンをそれぞれが行います。県のトライアスロン協会としては競技の裾野(すその)を広げるうえで、リレー形式をぜひやってもらいたかったそうです。私たちとしてはリレーにも、そして個人の選手の方にもどんどん参加して欲しいわけですが、難点は宿泊先の確保でした。例えば30チームがエントリーすると、それだけで90人分の宿泊先が必要になります。そうすると個人選手の宿泊先の確保が難しくなるというわけです。個人を取るか、団体を取るかということで関係者はずいぶん議論を重ね、その結果、やはり個人の選手を優先すべきだということになり、現在リレーは実施していません。
 松山市と合併して最初の大会となった20回大会(平成17年〔2005年〕)では、俳優の藤岡弘さんに記念講演とチャリティーオークションをやっていただき、前夜祭には選手たちに藤岡さんから激励の言葉をかけてもらったりしました。
 そして、昨年の21回大会では『パフォーマンス賞』を設けました。実はずっと以前の大会では選手の皆さんが沿道で声援を送る人たちを楽しませようと、ゴール近くになると幟(のぼり)を持って走ったり、工事用のヘルメットをかぶってみたり、ゴールにヘッドスライディングしてくれたり、中にはネクタイを締めた背広姿で、革靴を履(は)き、大きなカバンをさげてゴールしてくれたりする方もいたのです。これはとても楽しかったですね。選手の皆さんはゴール近くに着替えや小道具を置いておく場所を確保していて、そこで着替えたりしていたようです。こういったパフォーマンスが見られなくなって久しかったのですが、せっかく私たちを楽しませようとやってくれているのですから、賞を用意して称(たた)えようということにしたのです。」

 ウ 地域に大きな活力を

 「この大会は地域の活性化をめざして始めたものですから、開催時期もそういう発想で10回大会からは7月から8月下旬へと改めました。なぜかといいますと、7月は夏休みがあるのでたくさんの海水浴客が中島を訪れてくれます。ところが8月に入り、お盆が終わってしまえば海水浴客はやって来ないのです。7月開催だと海水浴客が民宿に予約を入れても、大会前後にはお断りしなければならないのです。しかし、8月下旬にすれば、海水浴客とかち合うこともなく、以前なら人が来なくなったこの時期にどっと人が押し寄せるようになったのです。
 大会の事業費は、当初もそして現在も総額で約1,200万円くらいかかっています。現在は選手からの参加費(一人あたり18,000円)で、事業費の8割方をまかなえており、残りの部分を松山市の予算で確保しています。当日の飲み物などの必要な物品はスポンサーとして協賛してくださる企業の皆さんからいただいて運営しており、事業は赤字にはなっていません。当日は約800名という多くの皆さんがボランティアとして大会を支えてくださっていますので、ボランティアの方には大会Tシャツやタオル、中島への往復乗船券、島内のバス乗車券、昼食のお弁当とお茶、そしてボランティア活動保険の加入費などを予算の範囲内で出させてもらっています。こうやって大会実施中は選手や関係者に御負担いただく船賃などの交通費や前日からの飲食代、それに宿泊費などが地域経済に活力を与え、所期の目的のとおり大会実施が地域の活性化に貢献をもたらしているのです。」